第146話 尋問
「さて、お前の部下達はあの世へ旅立った。お前はどうする?アインスバッハ侯」
ヴェルナールはそう言って仮面を強引に取り外した。
もちろん仮面を外すまで仮面の人物がアインスバッハであるという確証は無かったわけだが、同じエルンシュタット貴族としてその顔、背格好、声なとば知っていた。
「命が惜しいなら素直に俺の質問に答えろ」
いつもの丁寧な口調とはかけ離れた言葉遣い。
「ぐぬっ……」
剣先を眉間に突きつけられたアインスバッハは、剣先から目を離すことが出来ない。
「ではまず一つ目の質問だ、お前は誰の指示で動いていた?」
証拠としてバルバロッサに突き出すための核心をつく問い。
「それを答えてしまっては死んだ部下への示しがつかない」
意地なのか或いは簡単に殺されないと高を括っての態度なのか、アインスバッハは答えることを拒んだ。
「なら二つ目だ、エルンシュタット王は、どこへ行方は?」
ノエル率いる間諜達が旧エルンシュタット領周辺で捜索していたが一向に行方は分からなかった。
しかしいくつかの手がかりは見つかって、最有力な手がかりはヴュルツブルク司教領にその姿があったというものだった。
「知らぬ」
「そうか。これで最後だ。俺を排除する目的は?」
「……エルンシュタット再興」
三つ目の質問でようやくアインスバッハはヴェルナールの求める答えを口にした。
「ふっ、つまりエルンシュタット王は生きているということか」
ヴェルナールがエルンシュタット王の生死を掴むために誘導尋問に嵌ったことに気づいたアインスバッハは自らの口を押えた。
しかし、一度でた言葉が戻ることは無い。
「さて、ここまで三つの質問をしたわけだが……お前はそのうちの二つについて回答を拒否した。とりあえず指二本は切り落とすか……拒む度に一本ずつ消えていくが構わないよな?」
人の悪い笑みを浮かべたヴェルナールは、後ろ手に縛られたアインスバッハを蹴飛ばす。
そしてその指に剣先を押し当てた。
もちろん演技で切断するつもりなどサラサラない。
「やめてくれ!」
これから訪れる恐怖に耐えかねたアインスバッハは叫んだ。
「それが貴い血の流れる我々貴族のすることなのか!?」
続けざまにアインスバッハは、そう言った。
「では聞くが、暗闘を仕掛けたお前に貴い血が流れている貴族なのか?」
「……っ」
ヴェルナールの正論にアインスバッハは言葉を失った。
「話す気になったか?」
ヴェルナールの問いかけに尚もアインスバッハは答えない。
代わりに呻き声が漏れた。
「んぐっ……」
アインスバッハの口から流れる血にヴェルナールは全てを察した。
「追い込み過ぎたか……」
アインスバッハは、舌を噛み切って絶命していた。
「脈もないので間違いないです」
一応ノエルが死亡を確認する。
「まぁいい……民草を忘れ貴族の血が貴いだなどと考える男、生かしておく価値もない」
ヴェルナールはそう言うと、「考えを纏める。一人にしてくれ」そう言って家臣たちから少し離れた。
こうして一悶着あった狩りは、幕を閉じた。
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