閑話 ブリジットとレティシアのガールズトーク2

 「さすがにヒヤッとしたわね」

 「お兄様の家臣たちにかかれば、野心家のボードゥヴァン相手でもこんなものですわ」


 今日も今日とてエマニュエル伯の妹であるブリジットは、クーヴァン城にあるヴェルナールの執務室に入り浸っている。


 「本当は、怯えてヴェルナールの名前を呼んでたでしょ?」

 「なっ、ブリジットさんが何故それをっ!?」

 「図星だったのね?」

 「そ、そそ、そんなことありませんでしてよっ?」


 しどろもどろになりながらもレティシアは、否定する。


 「隠さなくてもいいわ。ヴェルナールが居なくて寂しいのは私も一緒だもの」


 執務室にある彼の愛用している椅子に腰を下ろすとブリジットは、肘掛けを撫でた。


 「お兄様、早く帰って来ないかしら……」

 「そうね……」


 二人してため息をついた。


 「そう言えばお兄様、今回の遠征ではエレオノーラさんと一緒らしいですわ」


 レティシアが思い出したように言うと、ブリジットがガバッと体を起こした。


 「なっ、あの泥棒猫と一緒に!?」

 「今頃、二人の仲は深まってることでしょうね」

 「あんたはそれでいいわけ!?」


 ブリジットがエレオノーラの撒いた餌に食いつくとブリジットはニヤッと笑った。


 「私は別にお兄様がエレオノーラさん、オレリアさん、ブリジット、私のうちでしたら誰と結びついても構わないですわ」


 自分の名前のところを強調しつつブリジットは言った。


 「しっかり自分の名前を入れてるわね!というより知らない人いたん出すけど!?え?オレリア……?誰その女っ!?」


 猫が威嚇するように髪の毛という髪の毛を逆立ててブリジットは、エレオノーラを問い詰めた。

 

 「ヴァロワ朝を継いだセルジュ王の妹君ですわ。大人びていてそれはもう美しいと評判の」

 「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙〜どうじでわだじのぎもじにばぎづがないのぉ?」


 執務室の机を握り拳で叩きながらブリジットは言った。


 「それはそうでしょう。だってお兄様は鈍感ですもの。私みたいに口にしないと分かってくれませんわ」


 レティシアは、家臣の前でも公然と「お兄様大好き!」と言っている。

 最も凄く仲の良い兄妹という風に家臣達の間では捉えられているが。

 

 「早くしないと我が主に取られてしまうかもしれませんね」


 それまで黙ってヴェルナールの代わりに政務をこなしていたアウローラが口を挟んだ。

 彼女の言う主というのは勿論、エレオノーラのことだ。


 「わかったわ……私も、もっともっとアピールしてヴェルナールに分からせてやるんだから!」


 そうブリジットは意気込んだが、しかしこの後エルンシュタットとアルフォンス公国が周囲の国を巻き込んでの戦争になることを知らなかった。

 

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