第41話 抜錨、改アイオワ!
根東率いる重量級の艦船は艦隊集結地点に撤収していた。そして陸海空全部隊に一斉補給の命令を下した。
「これで兵の士気は高いままにすることが可能なはずだ。」
海軍は特に消耗しておらず、必要最低限の燃料の補給を済ませておいた。今回の作戦の肝は陸軍なのだ。海軍は彼らの道を作るのみだ。
「根東司令、例のモノが届くそうです!」
「そうか、予定より随分早いじゃないか!」
そして望遠鏡で遠くを見る。
「あれが新造艦かぁ。」
遠くでもその威圧感を新造艦は放っていた。
その新造艦の名は『改敷島』。敷島の改良型である。俺は手元の資料を見た。
艦詳細
全長370m 全幅50m
最高速度34kt
兵装
・零式45口径51糎3連装砲 4基
・45口径15.5糎3連装砲 2基
・長10糎連装高角砲 18基
・前部甲板部埋込式垂直発射式噴進弾
・後部甲板部埋込式垂直発射式噴進弾
・対潜兵器『ASROC』
・20粍高速対空機関砲
設備
・零式大型対空電探
・零式対水上電探
・2号レーダー
・舷側対水雷防御用追加特殊装甲板
・艦尾航空機着発艦用プラットフォーム
・電磁式カタパルト
・注排水システム
・マルチ・ランチャー
と書いてあった。出雲より流石に大きさは小さくなったが敷島より近代化を施されている。名前に『敷島』が入っているが、この艦は敷島級ではなく改敷島級という新たな区分になる。
「こいつが八岐大蛇艦隊の2代目総旗艦になる予定なのですか?」副長が聞いてくる。
「もちろんだ。ただこいつは少し訳ありなんだよなぁ。」
「といいますと?」
実はこの艦は建造されたとされていた敷島型を流用していた。実際、根東自身も1番艦の敷島以外の敷島級は2隻見たかどうかであったのだ。見ようとする暇がなかったのだ。
しかし、各海軍工廠は俺に嘘をついて8隻建造したと報告していた。本当に建造されて動いていたのは敷島含め3隻だったのだ。残りは建造途中だった。
それを呉海軍工廠がお詫びの気持ちとして無理やりこの作戦に間に合うようにと建造したのがこの艦であった。おかげさまで八岐大蛇計画の見直しが検討されることとなるが、それもこの作戦が終わってからの話となる。
「では、根東司令。旗艦旗を改敷島にされますか?」
「いや、作戦終了時に行う。混乱は少しでも防いでおきたいからな。」
「了解しました。」
そう言い副長は戦闘指揮所に戻った。
そして根東も艦長席に座った。その時、通信機からブザーがなった。
「こちら艦橋、何があった。」
「こちら通信室、例の秘匿ドック付近を偵察中の伊401潜よりドックに動きがあったと報告がありました!」
「何だと!あそこには建造中のエンタープライズIIIしかいなかったはずだ!」
「それが伊401潜が言うには、アイオワ級と瓜二つの大型戦艦が偽装を施して停泊してた模様だそうです!」
ちょうど燃料と弾薬を補給し終えたのは幸運だった。
「よし、空母蒼龍に臨時指揮権を譲渡しろ。」
「了解!」
すぐに空母蒼龍の艦長に連絡をする。
『はい、こちらは空母蒼龍、艦橋です。』
「美咲、すまないが臨時指揮権をお前に託す。」
『状況を軽く説明していただけますか?』
ことの顛末をなるべく簡潔に伝えた。
『・・・わかりました。空母蒼龍、臨時指揮権を謹んでお受けいたします。ご健闘を!』
そう言って一方的に通信が切られた。
ここは戦場だ。イチャつくところではない。俺も気を引き締めなければと思った。そして命令する。
「これより正体不明の米軍艦を迎撃する!迎撃隊は戦艦は敷島と長門改、陸奥改、金剛の4隻。空母は飛龍のみ。巡洋艦は摩耶と鳥海。駆逐艦は浜風、海風、雪風の3隻の編成とする。各員奮励努力せよ!」
そう言い終えた時、
『通信室より司令!直接通信なので繋ぎます!』
どうやら伊401潜かららしい。
「どうした。」
『こちら伊401潜!根東司令、敵は改アイオワと広域通信で名乗っています!どうやら対潜噴進弾を搭載しているようです!本艦も既にその餌食になりました!』
予想より早く出ていた。そして噴進弾装備らしい。苦戦を強いられるような思いになった。
「後何分耐えられる。」
『30分が限界です!』
「ならば退艦準備を進めろ!」
『了か、うぁぁぁぁ!』
断末魔のような叫びと共に通信が切れた。
撃沈されたのだ。
「くそっ、艦隊、急ぎ現場に急行!」
再び艦隊は南下し秘匿ドックへと向かった。
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