第39話 米国反撃(な訳がないからw)

退避の完了した量産空母群は着々と秘匿兵器の準備に取り掛かっていた。

米国の隠し持っていた秘匿兵器、それは対地攻撃用ヘリである。

「ふふふ、これならばノースカロライナのジャップを一網打尽にできる!」

攻撃隊の指揮官はそう確信していた。

この攻ヘリは見た目も性能もAH-64 アパッチと同格なのだ。違う点は装甲の厚みと航続距離、そして名前であった。名前はブラックウルフ。多連装ミサイルポッドには特殊弾頭の対人兵器DDガスが満載されていた。DDガスは可燃性でマズルフラッシュでも火がつくほどのものでなおかつ有毒ガスである。30分、滞留しているエリアに居続けて呼吸し続けることにより死に至る。もちろん不可視だ。

『こちら、ブリッジ。エレベーターシャフト、準備完了しました。発艦作業に移行します。』

今、島の影からなら陸路で渡れる。前線で戦う友軍に対し

「待ってろブラザーたち!」そう彼は意気込んだ。


日本軍 敷島

「偵察機からの連絡は?」

「秘匿ドッグの発見に成功したものの、ドッグにはエンタープライズIIIが3隻建造中なだけで、新造艦はないそうであります。」

残念ながら読みが外れてしまった。とはいえ新型空母を潰せる良い機会ともなった。このまま前進し、量産空母を撃滅するか。それとも秘匿ドッグを強襲するか。その時だった。

「近海偵察中の伊401潜より入電!聞きなれないプロペラの音を多数感知したそうです!」

「プロペラで、か。量産空母から飛び立ったものか?」

「恐らくそうでしょう。音源からもそれがわかります。」

図面にははっきりと音源が図示されていた。そこは丁度隠れるには良さそうな場所だった。

「念のため敷島以下の重量級の艦は艦隊集結地まで撤退し、足の速い駆逐艦をいかせよう。」

「了解しました。」

敷島含めた追撃艦隊の半数は撤退していった。そして追撃艦隊は更に奥へと進んだ。


「こちら追撃艦隊旗艦 島風。敵艦は未だ見えず。」

『了解した、だがまだ捜索してくれ。』

「了解しました。」

島風艦長は飛んだ貧乏グジを引かされたと愚痴をこぼしていた。足の速い島風に随伴艦は付いてこれないから速度を落とさなければならないのだ。せっかくのセールスポイントが台無しになる。

「観測班、異常は?」

「特になし、レーダーには探知できません。」

「馬鹿か、目で見ろ、目で。」

レーダーなんてもんは初っ端から信用に値しない。最後は目がものを言うのだ。

しかし、最新鋭の機械が人を超えた。

「レーダー、聴音機共に感あり。目標は50個の物体。詳細は不明。5個分かれてこっちに向かってきた!敵は恐らく足の遅さから攻撃機!」

「対空戦闘用意!CIWSで歓迎してやれ!」

追撃艦隊は既に主砲による対空戦闘を開始していた。しかし、どうもおかしい。

敵の速度が異様に遅い。航空機の速度ではないのだ。たまに止まっているようにも見える。あくまで射撃はレーダーを当てにしている距離だ。

「艦隊、撃ち方やめ!敵を引きつけろ!」

艦長の思惑通り、敵は速度を上げ目視の圏内まで接近してきた。そして見慣れぬものを目で見た。


「ちっ、ジャップの艦隊だ。俺たちの母艦を狙ってやがる。」

『まぁ良いじゃないですか。もうもぬけの殻ですし。』

「確かに、では威嚇攻撃をしつつ海岸戦線まで向かうぞ。4機ついてこい!」

ブラックウルフ部隊は訓練された動きで艦隊へと詰め寄った。小回りでは圧倒的に優位なのだ。

「やる気のないオート任せなんて!」

余裕の回避を敵に見せつけていく。そうするうちに射撃が止んだ。近づいてから仕留めるらしい。

「面白い!その勝負、受けてたつ!」


「敵機、更に近づく!噴進弾の有効射程に入った!」

「だめだ、CIWSの有効射程まで待つんだ。」

目視でももうはっきりと確認できる距離まで近づいた。どうやらヘリのようだ。その胴体の脇腹には小型の主翼らしきものもある。そこにはロケットランチャーと思われるものと魚雷、コクピット下に機関砲がある。確認し終わると同時に魚雷が投下された。

「魚雷がくるぞ!対潜ランチャー放て!」

迫る魚雷をかなりの近距離で迎撃に成功した。

そしてCIWSが唸り上げる。

1機、また1機とヘリを落とす。

残るは3機。圧倒的だった。しかし、艦隊最後尾の駆逐艦霞が爆発した。そして艦尾から徐々に沈降していった。


「よーし、よーし!一気に攻め落とせ!」

そう、落とされていたのは全てデコイだったのだ。全て立体投影であったのだ。レーダーに写っていた機体は全て偽物。本物はステルスシステム装甲と最新の光学迷彩により姿を消すことに成功していた。そして背後まで忍び寄り、本物の魚雷を打ち込むのだ。

「見てろよ、ここからが反撃の時間d・・・!」

言葉を発する間も無く彼含め本物5機は撃墜された。


「あいつら馬鹿なのかなぁ?」

ステルスはまだ技術が確立されていない。光学迷彩も同様だ。そのため攻撃の直後、一瞬レーダーに写った。更に攻撃時には光学迷彩が解けてしまうらしい。だから目視ににて攻撃ができる。

「このまま反撃なんてさせねぇぜ。」

敵機を撃滅した勢いそのままで量産空母艦隊と接敵した。空母には護衛艦がいなかったので呆気なく艦隊も撃破したのだった。


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