第33話 ジェット機参戦!
1944年10月6日
千葉海軍専用飛行場
ここでは新たな作戦のための装備が開発されていた。ジェット戦闘機である。ジェットエンジンは今だに不安定な要素しかない。しかし、とりあえず鹵獲した機体から分かったのは向こうのエンジンもまだ完成形ではないということだ。それに改良を施したのだ。
試作型ジェット戦闘機『秋水』にそのエンジンは搭載された。秋水はあくまでも試作に過ぎない。そのため、航続距離も北海道から九州が限界だ。しかし、時速は脅威の1220キロをマークした。だいたいマッハ1である。パイロットにはGに耐えれる特殊スーツを用意しているのでその点では大丈夫だ。
更に機関砲も30粍翼内蔵型長銃身機関砲を計4門装備している。それ故に火力も馬鹿にならない。欠点となっていた機動性の改善は残念ながらできなかった。それでも重要な戦果であった。
そんな中、基地全体に警報が鳴り響く。
『当基地に向けて爆撃機団接近!発進可能な機は全機、迎撃戦闘を開始せよ!』
基地の大型対空電探が機影を捉えたようだ。そのデータは秋水にもリンクしてある。この基地の防衛戦力は零戦52型が3機と秋水が2機のみの貧弱な戦力だった。それに対する敵爆撃機団はどこから来たのかはわからないが30機だそうだ。それに護衛戦闘機は10機ほど。劣勢そのものだが形だけでも防衛をしなければ。それに、実戦でのデータが取れる!
「こちら秋水1番、発進します!」
ちょうど機体をこれから飛ばそうとしていた矢先であったので、即時発進ができた。
急加速によるGはスーツのおかげで軽減できた。それに秋水2番が続く。零戦は後5分はかかるらしい。それまでになんとか制空維持をしなければ。
「こちらボマー1、ボマー2から14は爆撃体制にはいれ。」
『了解した。ん?・・・うわぁぁ!』
「どうしたボマー3?」
『こちらボマー3、攻撃を受けている!』
その直後、ボマー3であるB25爆撃機は爆発四散した。
「何故だ?レーダーには何も写っていないのに!」
そのボマー1の横のスレスレを秋水1番がパスする。大きめのB25でもパスされただけで機体を揺らすほどのスピードだった。
「くそ!対空迎撃!」
備え付けのタレットが迎撃をする。しかし、機体本体は爆撃姿勢のまま、つまりカモだ。
「照準固定、完了。発射!」
秋水の30粍機関砲がカモめがけて放たれる。
その威力は絶大の一言に尽きた。装甲がかなり厚めのB25を食い破ったのだ。ほとんどが貫通有効弾となり、爆弾槽に誘爆させていく。そしてまた一機爆発していった。
タレットの雨は秋水の前では無意味であった。明らかに常軌を逸した速さで避けていき、消えたと思えば直上から30粍の雨を降らす。たかが2機の戦闘機を相手に彼らはなす術がなかった。制空戦闘用の護衛機も迂闊に手を出せばフレンドリーファイアとなることを知っているため動けない。それを避けるために一旦硬度を下げた。それが護衛戦闘機隊の命運が尽きた瞬間だった。下で待っていたのは零戦52型の部隊であった。
「護衛戦闘機がやっぱり降りてきやがったぞ!撃ち殺せ!」
彼らの機体には対空炸裂弾が装備されていた。つまり、空を飛ぶ高角砲という表現が最もあっているだろう。下にそんな奴らが待ち構えていたが故に慌てていた護衛部隊は対処することができず、対空バブルに一つ、また一つと消し炭にされていった。
「こちら、ボマー14。回収部隊に通達、作戦は失敗した!これより回収ポイントに向かう!」
辛うじて30機中3機は健在だった。しかし、壊滅的被害を受けたのだ。撤退する判断をようやく下した。爆弾槽の横のハッチが吹き飛ぶ。
そこには筒状のものがあった。
「よーし、後3機だ!気を引き締めてけよ!」
『了解であります!・・ん?隊長!あれを!』
それは、B25や護衛戦闘機隊の残党どもがオレンジ色の火を機体から出していたのだ。
「あれは!ロケットブースターか!」
ロケットブースターは使い捨てであったが一時的な速さはジェット機に引けを取らない。このまま逃げられると情報などが漏れてしまう。絶対に落とさなければ。
「零戦部隊は基地に帰還せよ。秋水2番、あれを使うぞ!」
『了解です!』
『あれ』とは緊急加速装置だった。それはロケットブースターの上位互換でもあり下位互換でもあった。出力が極めて不安定で自爆の恐れがあった。しかし、スピードはマッハ3に相当した。これは、名の通り緊急時にのみ使用するものだ。しかし、逃げられるよりかはマシだ。
緊急加速装置を作動させた。
「ここまで来ればなんとかなるだろう。」
レーダーでも補足できないほど遠くまで逃げれたようだ。残存機数はたったの5機だった。それでも、このまま太平洋上にいる空母まで逃げれそうだ。しかし、世の中はそれほど甘いものではなかった。
「機長、レーダーに敵戦闘機を補足!」
「な、何故だ!このロケットブースターに勝てるとでも言うのか!」
「敵は、本機の1.5倍の速度で接近しています!」
そして最後に残った護衛機の2機が撃墜される。
『なんとか追いつきましたね、隊長!』
「ああ、ギリギリだったがな。」
その時既に敵のブースターの炎は消えかかっていた。つまり、燃料切れだ。
「特殊兵装を使用する。後、加速装置は切っとけ。」
秋水にはもう一つ兵装があった。それは熱源追尾式ロケットであった。いわゆるミサイルだ。
「ロケット、発射!」
両翼端につけられたロケットはエンジンを全開にして熱くなっている爆撃機目掛けて白煙を伸ばしていった。そして、目標に命中する。
威力自体はそこまで高いものではなかったがエンジンを狙った攻撃だった。敵機体はみるみる速度を落としていく。そして、鈍足の機体は30粍の餌食となっていく。後はこれの繰り返しだった。
こうして、なんとか秋水の秘密は守られたわけだ。敵の無線による連絡も行われていなかったそうだ。
しかし、なぜこんなところまで爆撃機が来れたのかが、パイロットたちの間では当面の話の話題となったのだった。
そして、一連の出来事は軍上層部を大きく震撼させたのだ。
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