第32話 新兵器検証と開発

陸戦隊を完全に回収した。そして八岐大蛇艦隊はそれぞれの本拠地に帰っていった。

もちろんたくさんの鹵獲品を持ち帰って。


横須賀海軍工廠

持ち帰ってこれた鹵獲品はたくさんあった。もちろん艦艇が多数だった。とりあえず鹵獲した艦艇には鹵獲n番艦とすることとした。そしてそれをまとめてみた。


鹵獲1番艦 超大型原子力空母

鹵獲2番艦 巡洋戦艦

鹵獲3番艦 巡洋戦艦

鹵獲4番艦 重巡洋艦

鹵獲5番艦 軽巡洋艦

鹵獲6番艦 大型軽巡洋艦

鹵獲7番艦 駆逐艦


鹵獲1番艦の超大型原子力空母以外はデータやシルエットは既に確認されていた艦だった。まあほとんどゴミに等しかった。戦力の足しくらいにはなろう。しかし、その鹵獲1番艦は明らかにオーバースペックであった。それは、空母の大和を3隻同時に相手できるほどのものだった。


鹵獲1番艦(艦内の公開日誌にはエンタープライズIIIと書かれている。)


スペック 

全長426メートル

全幅65メートル

最大前進速力 30ノット

最大後進速力 23ノット


装備品

16インチ4連装砲 2基8門

5インチ連装砲 30基60門

40ミリ3連装機関砲 50基150門

12センチ50連装対空ロケット砲 12基


艦載機

名称不明のジェット推進式戦闘機 100機

名称不明のジェット推進式爆撃機 150機

名称不明のジェット推進式攻撃機 150機


列挙するだけで頭痛が痛くなるほど狂った性能だ。こんな大型艦艇を我々だけでなくアメリカも保有していたのだ。さらに、ジェット機まで採用されているようだ。マニュアルもご丁寧に保管されていたので何人かが試験飛行を行なってくれた。感想は、

「早すぎてゲロ吐いたわ。」

「旋回で我々に劣るが総合性能は明らかに上のものだ。」

「速い、硬い、強いの三拍子が揃っている。」

と言ったものだ。要するに強いのだ。

対艦性能もそこそこある。装甲評価をしたところ、敷島の装甲と同じような形式が取られており、46糎砲に耐えれる性能だ。こんな大物は滅多にいないものだ。

最高の鹵獲品となっただろう。

そして、艦名を新たに変えなければならない。

艦名は『御嶽』とされた。

原子力推進式ではあったものの、燃料は必ず入れておいてあった。これは、非常時に原子力推進から燃料推進に切り替えて行動可能にするためである。恐ろしいことにこの艦には特定の手順と承認を得ることにより、自爆も可能となっている。

とにかく解析を進め、ジェット機の開発に成功することが我々海軍の当面の課題となった。


そんな我々を驚かせた一件からしばらく経ったある日、久しぶりに石原首相に呼ばれた。

「久しぶりだな、中将。」

「お久しぶりです、首相!」

「今日は話があってきた。」

大概こういう時の彼の提案はあまり俺には美味しくない話だ。逃げようとしたところを周りのSPに捕まえられる。

「何をする、HA⭐︎NA⭐︎SE!わぁぁぁぁ!」

「ちょっと落ち着けよ。君には技術屋として少し陸軍に行ってもらう。」

「なんでぇ!よりによって犬猿の仲の陸軍に行かにゃならんのですか!」

「陸軍からの直々の御指名でな。なんでも新兵器の意見が欲しいらしい。君のことを高く評価している証拠じゃないか?」

「是非行かせていただきます!」

高く評価することはニートを動かすには簡単な方法の一つであった。


1944年8月4日

富士陸軍演習場内 

第2軍司令部会議室


それは日本で記録的暑さを更新してしまうほどの暑さだった。そんな中の会議室も同様の暑さであった。

「いやはや、横須賀からここまで来ていただきどうも!」

迎えたのは栗林忠道陸軍中将であった。

彼は前世における硫黄島守備隊の総司令として世界に名を知らしめた猛将であった。同じ中将のはずなのに天皇を相手しているような錯覚に襲われるほどのオーラだった。

「どうも。自分は根東康彦海軍中将であります。今日は新兵器について意見の交流をしにまいりました。」

「意見交流?おかしいな、おい!事実確認急げよ!」

慌ただしく急になった。そして会議室で待たされること10分。

「根東中将、申し訳ない!首相に伝えたことが間違って伝わったらしい。本当はあなたに試乗や試射をしてもらいたかったんだ。」

そう言いながら彼は足下の大きな箱をゴソゴソし始めた。そして差し出す。

「今からこれに着替えてください。」

それは戦車搭乗員の服装だった。


真夏の暑さの中、厚着で外を歩くのは地獄の所業だ。それでもなんとか支持された戦車に乗った。

『根東中将、今乗っているのは試作戦車の61式戦車です。』

61式戦車、これは重エイブラムスに対抗する戦車として開発がされている戦車だ。しかし、その見た目は明らかに前世で放送していたロボットアニメのやられ役戦車にそっくりだった。

しかし、それは本編ではそうだっただけで外伝ではしっかりと戦車としての性能を遺憾なく発揮していた。つまり、

「栗林中将、これの主砲は150ミリ連装滑腔砲で時速は最大で50キロまで出せますよね?」

『な、なんでそれを知っているんですか?』

情報自体は漏洩していなかったと思っているようだ。実際漏洩はしていなかった。ただアニメで見たやつに酷似していただけだ。

「理由はなんでもいいです。それより、この戦車には致命的な欠点があります。」

『なんですか?』

「対歩兵処理能力です。」

対歩兵用兵装は主砲のみであったのだ。後はロードキルくらいか。

『これは重エイブラムス用に設計された戦車です。なので歩兵を相手には・・・。』

「甘いです、それでは。歩兵は常に神出鬼没。ことにこの戦車に電探搭載の予定は?」

『・・・無い。』

「なら尚更です。単騎戦闘の時になったら戦車だけに気を配ってしまうと歩兵に必ず狩られます。せめて機関砲はつけてください!」

『分かった。必ずこれには対歩兵用兵装をつける!』

合意を得られた。こんな感じのが1週間続いた。

「残念ですが、今日をもって任務の完了を栗林陸軍中将に報告します。」

「了解です。お勤めご苦労様でした!」

栗林中将と硬い握手をし、俺は富士の陸軍基地を去っていった。

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