第31話 新兵器投入

アメリカは新兵器を投入して来たのだ。

M1改重戦車 重エイブラムス

主砲100センチ連装滑腔砲

主砲同軸12.7ミリ機関砲 2門

上部12.7ミリ連装機関砲 1基

時速40キロの快適な足回りを持つ。

装甲も重量による速度低減を最小限にしつつ、対日本軍戦車に耐えうる厚みだ。

それを宵闇に包まれた、サンディエゴの海軍基地へと差し向けた。


「こちら、第1重戦車隊。侵入した日本軍に対し攻撃を敢行する。基地に被害が出ても構わない。」

彼らは重エイブラムス5両で編成されていた。それはまともな対戦車火器を持たない歩兵に対してはあまりに過剰とも言えた。しかし、司令塔のオペレーターが発狂していたのは違うものに対してだった。


「違う!こんな戦車じゃない!ペンタゴンの連中は俺たちをも見殺しにする気なんだ!」

「落ち着け、何があったか正確に言え。」

「私が代わりに話します。まずあなた方が攻撃を仕掛けた時にはすでに増援要請をしました。しかし、それは却下され代わりに遠距離支援攻撃、コードネームは『ランスロット』!」

「ランスロットか。なかなかいい名前だな。恐らくそれは飛翔物体だな?」

「そうです。飛行爆弾とも呼ばれています。」

どうやらそこまでして奪われたくない何かがあるようだ。

「おい、貴様らどうせ何か隠しているんだろ?さっさとその場所を言え!」

ナイフを首筋に当てる。

「ひぃぃぃ!わ、わかった!言えばいいんだろ?海軍ドッグのナンバー00と書かれた方面に行け。そうしたら注意書きが書いてある扉がある。そこを破壊して先に進めば後はわかるだろう。とりあえず軍艦だ。」

「ランスロット到達までは後何分だ。」

「後、30分いえ、25分です!」

急いで海軍部隊に連絡をする。

「海軍部隊聞こえているだろ?そっちの人間を最低20名寄越してくれ。陸軍組も一応船は動かせるがとても怪しい操艦になる。」

『了解した。A、B分隊を向かわせる。』

秘匿ドッグに入れるぐらいだから相当なものだ。予想としては空母になるだろう。何故なら既に時代は航空優勢の時代であると陸軍ですら感じてしまってきたのだから。


「煙幕支援砲撃開始!アルミニウムも絶やすな!目を潰してやれ!」

海岸からは次々と煙幕の道を作るべく迫撃砲部隊が撃ち続けていた。しかし、

「敵歩兵確認、殲滅する。」

悪魔が来てしまった。それはあまりにも大きかった。


「第3中隊?どうした、応答しろ!」

突然、砲撃が止んでしまった。そして彼らとは音信不通になった。もしかするとさっきから基地内に重エイブラムスを見ないのは!

「輸送船に一時離脱命令!海岸に戦車がいるぞ!」

急いで命令した。これで間に合ってくれるといいが。不安は持ちながらも部隊の半分を連れて司令室を飛び出し、秘匿ドッグへと走っていった。


「中将!我々も支援攻撃をしましょう!」

「・・・ノーだな。彼らも巻き添えをくらう。何より施設に近づきすぎれば色々と不都合があるんだ。だからノーだ。」

そういう俺も戦闘機の1つや2つくらいは出してやりたかった。それを冷静な脳が抑える。行ったところで落とされるがオチだ。今は彼らの成功を祈るのみだ。それでも兵員輸送船だけは、ほとんど全てを現場に急行させた。


「岩本大尉、ここが秘匿ドッグのようです。」

残り僅かなロケット弾を放つ。扉はあっけなく吹き飛んだ。その先は真っ暗だった。少し探して近くにあった配電盤のスイッチを全て起動した。ドッグ内に光が灯る。そこには予想通りの超大型空母が居た。新型の艦載機付きでだ。

「これは、凄いな。」

「米帝の資源力あってこそのものだ。日本ではそうそう簡単に作れんだろう。」

うっかり見惚れてしまったが、そんな場合ではなかった。急いで機関を始動する。連絡によると、他の鹵獲した艦艇は無事に港を出て艦隊との合流ポイントまで行けそうだそうだ。

我々も続かなければならない。いざ出航と行こうとした途端、爆音が鳴り響いた。そしてドッグの側面の隠蔽用のコンクリの壁が木っ端微塵となった。

「大尉!港の出口に敵艦隊複数です!」

「艦種特定急げ!」

「恐らく重巡洋艦5隻です。しかし、本艦には砲術科はまだ配備していませんし、なにより全員が今初乗りなんですよ!どうするんです!」

「・・・強行突破だ。何ノットまで出せれる?」

「推定、30ノットです。」

「では30ノットで敵艦隊の待ち伏せを突き破れ!」

そして巨艦は動き始めた。それはとても軽い動きだった。そして多分レーダーと思われる物を見ると、光点が3つあった。これがランスロットだろう。動き出した我々が鹵獲した艦に彼らはまだ気づいていないようだった。急に砲撃を中止し、進路を開けてくれた。国旗もまだアメリカ国旗のままだった。しかし、最大難易度の関門が現れた。Englishだ。

「おい、そこの空母!乗っているのは誰だ!」

もちろん全編英語である。

「あー、あー、よく聞こえなかった。だけど私は通らせていただいてもよろしいですか?」

これも英語だ。さっきの司令塔内では一応通訳がいた。だがここにはいなかった。そのためさっきのようなカタコト英語になってしまったのだ。しかし、

「よくわからんが、秘匿デッキから出て来たぐらいなんだから、まあ通ってよし!」

全く意味がわからなかったが、無事に通してくれた。

そして25分が経過した。

既に遠くなったサンディエゴの基地がオレンジ色の光に包まれた。着弾したようだ。鹵獲した艦艇も多数あるようだ。しかし、重エイブラムスに食われたと思われる第3中隊だけは悔やまれる。そう思っていたのだが、

『・・・・・・・・・・こ・・・第3ちゅ・・・無事・・・・・成功。くり・・・・無事に脱出に成功。』

どうやら彼らもまた無事だったようだ。詳しい話はまた帰ってから聞けば良かろう。

そして鹵獲艦艇と超大型空母、そして輸送船の小艦隊は八岐大蛇艦隊へと戻っていった。

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