第26話 大和(の進化版)VSアイオワ級4姉妹
「中将!キンケイド艦隊と思しき大艦隊がこちらの方までだいぶ迫ってきています!会敵予想時刻、残り1時間!」
どうやら世間話をしている状況ではないようだ。
「ではフレッチャー提督、貴官には八岐大蛇艦隊第1支援艦隊として戦闘に参加していただく。そして、現場指揮官権限として貴方は日本海軍における臨時少将として扱うことといたします。よろしいですか?」
「もちろんです、根東中将。」
そして第1艦隊の動きを彼に伝えた。連絡があれば非常時以外俺に伝えるように言った。うちらの艦隊には英語を話せる奴などほとんどいないからだ。
「総員、この先も苦しくなる。だから今できるだけ休息と食事を取るように。休息と食事は人間にとっての活力である。」
そして俺は士官食堂で少将と食事をした。その時に何人かの下士官が少将の著書や論文などを片手にサインを求めていた。ついでとして俺も同様の被害を食らった。紳士対応とは彼のことを言うのだろう。
「私の趣味で描いてくれたものをこんなに読んでくれるとはとてもありがたいです。」
こんな感じのことをサイン目当ての奴ら1人づつに言っていったのだ。内容は全部違って、そいつの性格や事情などを軽く聞いて返答していく。紳士の鏡である。俺もこうなりたいものだ。
「中将、お食事中失礼します。敵艦隊から航空隊が接近、残り25分で第1防空ラインに到達します。」「了解した。」
いよいよだ。おそらくフレッチャー艦隊より強大な敵となろう。そしてその先には必ずさらに強いものがいるということも。
「航空機搭載艦艇全艦に通達、戦闘機隊のみ発艦せよ。攻撃隊は待機。」
「了解、戦闘機隊のみ発艦せよ。攻撃隊は待機されたし。」
各官邸の飛行甲板やカタパルトから次々と戦闘機が発艦していく。戦闘機は主に零戦52型としていたが、紫電などの特殊な機体を一部用意していた。これは隊長機やエースパイロットなどに当てられていた。彼らが戦場をコントロールし相手を恐怖に陥れるといった心理的効果も狙っている。
空母蒼龍 戦闘艦橋
「戦闘機隊、接敵しました。」
「わかったわ。戦闘機隊にはあくまで高高度で展開している敵攻撃隊の迎撃のみにとどめさせなさい。そうしなければこっちの対空砲火に巻き込まれるわ。」
「了解、各戦闘機隊、高高度迎撃に努めよ。深追い無用、残ったのはこちらで落とす。」
『こちら戦闘隊長、了解した。やばくなったら下に降りるのはいいんだな?』
「艦長、どうします?」
「戦闘隊長、その判断はそちらに一任します。あくまでも低空に降りてくるのは味方に殺されても文句は言わないと言うことですよね?」
『へっ、よく言うようになったな美咲ちゃんよ。そう言うことだ。まあ俺たちにかかりゃ高高度で敵機は落ちるさ。』
「無事の帰還をお待ちしております。」
『どうも!』
機銃や対空ロケット砲の音が遥か上から鳴り始めた。そのすぐ後、米軍機が火を上げながら落ちてきた。撃墜したようだ。それが次から次へと落ちてくる。彼らの腕は本物だ。
「艦長!敵攻撃機が北西より接近!」
「対空戦闘始め!味方に当たっても構わない!落とすことを最優先となせ!」
蒼龍や周りの空母の高密度対空弾幕が張られる。おそらく150機はこの一段だけでいただろう。これを第1波とするのなら彼等は後少なくとも5波以上はあるだろう。そんな懸念を持ちつつひとまず目の前の大群を抑えなければ。
「索敵班、今のは本当なんだな!?」
「はい!確実にアイオワ級戦艦4隻です!」
奴らは完膚なきまでに潰すために本土防衛ではなくこっちにアイオワ級戦艦を4隻も寄越してきたのだ。このままでは先鋒陣と戦闘になり予想ではあるが彼等はなすすべもなく敗走するだろう。そうならないようにするためには、一つしかない。
「・・・通信士。第1支援艦隊に連絡。敷島、出雲と貴艦隊をもってアイオワ級を叩くと。」
「本気なんですか?航空隊を出してからでも遅くはないのでは?」
「馬鹿者!アメリカは対空特化の先駆けだぞ。そんなとこに突っ込んだら死ぬだけで何も得れん。」
恐らくアイオワ級は対空特化にしているに違いない。フレッチャーはこの間の存在は奴らに伝えてはいないそうだ。だからバレることはないだろう。なら男のロマンだった大和vsアイオワの実現へと行こうではないか。
「全艦通達、これより敷島、出雲、第1支援艦隊は先鋒陣艦隊の前方に出て敵大型戦艦アイオワ級4隻を叩く。その為、旗艦を一時的に空母蒼龍に譲渡する!以降の指示は蒼龍に従え!」
美咲には悪いが大役を背負ってもらおう。今頃通信機を蹴っているだろう。そう思いながら艦を先鋒陣へと走らせた。
cbs艦隊の先遣艦隊が先鋒陣と接触した。現在戦闘状況は互いに基本を単縦陣とした同向戦となっている。まだ主力は到達できていないようだ。早くしなければと思っていた時だった。先鋒陣の4隻が一斉に沈んだのだ。まだ主力は交戦距離に入っていないはずだ。しかし、例外がある。
MK.7 16インチ砲、通称40.6センチ砲。アイオワ級の標準主砲だ。敷島の51糎砲と同等の射程距離と圧倒的貫通力が売りの主砲だ。恐らく今回放たれたのはそれのさらに改良化された、
MK.8 16インチ砲だろう。これに関しては射撃精度の向上が図られており、現存する中では最高峰の射撃精度だ。敷島や出雲でも勝つことはできないほどだ。その精度を持ってして先鋒陣を当てることなどは容易いことだ。高性能レーダーも使っているのだろう。移動中の本艦の周りに大きな水柱が9つ立った。それでも引くわけにはいかない。
「砲術長、今の射撃で発射地点は割り出せるか?」
「はい。今のではっきりとわかりました。攻撃の許可を。」
「よし、統制射撃準備!総員甲板より退避せよ。繰り返す、甲板より退避せよ!」
敷島の砲塔と出雲の砲塔の動きがリンクした。これにより、統制射撃を敢行することができる。
「主砲、目標アイオワ級、斉射開始!」
計7基28門の51糎砲がアイオワ級目掛けて放たれた。その凄まじい音は周りにいた駆逐艦を横揺らししてしまうほどであった。
米軍キンケイド艦隊旗艦 アイオワ
「全弾命中、日本軍の特II型駆逐艦2隻と長良型軽巡洋艦、古鷹型重巡洋艦を撃沈しました。」
「素晴らしい、初弾でこれほどとは。次からもこの調子で頼みますよ。」
そう顔に笑みを浮かべながら聞いていたのはキンケイド少将であった。しかし、その笑みはすぐに恐怖に置き換わった。
「少将!敵艦発砲!本艦への直撃コースです!」
「Shit!回避せよ!」
しかし、発見が少し遅れたため艦尾の構造物に当たりそのエリアが消し炭になっていた。
「ちっ!発見がまだ早かったから済んだ方か。こちらも砲撃を発砲してきた間に集中せよ!」
「了解。目標は?」
「目標、敵大型戦艦!恐らく2隻だ。」
「了解!目標、敵大型戦艦2隻。発砲位置の特定は?」
「ダメです!爆風はおろか弾道の軌跡が全くもってわからんのです。多分特殊弾薬だったのではないかいと・・・。」
「それじゃあこっちは撃たれるのを待ってるだけなのか!」
「はい、残念ながら。少なくとももう1斉射分は喰らわなければ。」
「くそぅ!ジャップめ!」
こうして男の夢の戦いは始まった。
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