第22話 MI作戦、開始!
1943年 11月5日 午前2時
敵機動艦隊発見との報を受けこの日は目覚めた。向こうの艦隊も哨戒機を発艦させてこっちの方角に侵攻してきているそうだ。零偵に交代命令を出させた。
「さぁ、始めるぞ!艦隊、前進!」
この号令により、転生日本においての歴史的作戦が開始された。
同日 午前4時
敢えて攻撃航空部隊を多数配備し、防空戦闘機隊は少数の編成となった。これはCIWSなどの防空兵器群の射線の邪魔になる恐れがあるからだ。その攻撃航空部隊は海面スレスレを敵艦隊に近づくまで飛んでいた。一方、彼らの護衛戦闘機隊はかなり高高度を飛んでいた。その護衛戦闘機隊はこの時刻になった途端に米軍防空戦闘機隊と鉢合わせとなった。
「野郎ども、アメ公がお出ましだ!丁重にエスコートしてやれ!」
最新鋭の20粍機関砲が一斉に火を吹き、対空ロケット弾が無数の炎の花を咲かせた。彼等は最初にそれを受けたため混乱して隊形の維持に失敗したものの全機が遊撃体制に入ったため、護衛戦闘機隊も遊撃に入った。そもそもこれが主目的なのだから。つまるところ囮だ。
その間にも攻撃部隊は敵艦隊の喉元まで迫っていた。
午前5時
米軍機動艦隊旗艦 空母 エンタープライズ
「大尉、ジャップどもはどうかね?」
「はい、レーダーでは未だ検知できず。しかし、防空戦闘機隊が高高度にて戦闘中です。雲の上にいるとかなんとか言っております。」
「ふん、ここで戦闘機をいかに落とせるかによって奴らは戦術を限定されていくのだ。楽しみだな。奴らの死にゆくさまが。」
余裕をぶっこいてコーヒーを飲み始めた。
「やはり、少し薄めのコーヒーが1番いい。」
そんな時に、レーダーが警告音を鳴らした。
「なにごとか!」
「レーダーに感あり。しかし、どこにも映っていません。誤報でしょうか?」
「馬鹿者、奴らは近くにまできている。全艦対空戦闘、用意!」
0度を保っていた機銃が50度にまで上がった。
しかし、一向に敵は現れない。なのにレーダーはずっと金切り声を上げ続けていた。
「見張り所より、艦長!敵航空部隊は海面スレスレを飛び続けています!」
失態だ。航空部隊は空から来るものだと思っていたがそれは違った。奴らは訓練されきっていた。
「爆撃隊、急上昇の後急降下爆撃敢行だ。雷撃隊攻撃、初め!」魚雷の白線が青い海のキャンパスを横切っていく。その行先は勿論旗艦、エンタープライズただ1艦のみ!その魚雷は必中コースにあった。しかし、その進路を駆逐艦が横入りをして妨害した。
「くそ!魚雷は失敗、だが盾になった駆逐艦や巡洋艦クラスにいいダメージを与えれている。雷撃隊、ここは引くぞ!」
「爆撃隊、急上昇!チャンスは1回だけだぞ!」
それに続き爆撃隊が強襲する。
敵艦隊目前で急上昇し対空砲火を撹乱する。
そして急降下爆撃。爆弾は高性能燃焼火薬爆弾だ。空母に被弾すれば消火は困難な代物となっている。
「このまま燃えて使えなくなっちまぇ!」
爆弾はエンタープライズだけでなく周りにいたホーネットやヨークタウンにまで向けられた。爆撃は、大成功した。全ての爆弾が甲板に命中し、中には貫通弾となり、大爆発を起こさせた猛者もいた。そして大半はナパーム弾のように火を広げっていった。護衛戦闘機隊も練度の差により制空権を確保することに成功した。
攻撃航空部隊は一旦、全機帰還命令が下された。戦闘機隊は制空権の維持に努めされられた。
同日 午前6時
「航空部隊、攻撃に成功!前進可能です。」
「よし、上々。艦隊、第1戦速まで上げろ。敵艦隊と砲雷撃戦を開始せよ。なお向こうからも攻撃部隊が来ている。対空警戒を厳となせ!」
CIWSの砲身が回転を始める。予備動作だ。いつでも撃つためのだ。
「艦隊司令!敵航空部隊、第1種対空兵装ラインに到達。」「まだ待て。」決して焦ってはならない。
「第2種対空兵装ラインに一部がかかりました。」「待て。」まだなのだ。
「司令!敵航空部隊、全艦第3種対空戦闘可能ラインに到達!」
「対空総合指揮所より、艦隊司令。攻撃許可を!」
「・・・対空戦闘始め!一機たりと逃すな!」
「了解!対空戦闘開始!」
各艦艇のCIWSが一斉発射される。この時代におけるCIWSもどきはまだイージスシステムなんてものがないので完全手動だ。それでも訓練された兵は機械のような精密さを持ち合わせる。
一機、また一機と矢継ぎ早に落としていく。米軍艦隊にはまだ針のような隙間があったものの、こっちにはその隙すらない。一斉に射撃を喰らう形となった敵航空隊は何もできずに全機、CIWSの餌食となった。しかし、息をつく間も無く緊急入電が入る。
それはMI作戦と同時期に開始されていた、米軍本土への侵攻作戦である、A作戦の司令長官からだった。
発、A作戦司令部 宛、MI作戦司令部
現在、我米軍の海軍基地の強襲と共に予定地の海岸まで侵攻。同地域を完全占領した。それにより、米軍の兵器を大量に鹵獲することに成功。特に海軍基地ではおそらく最新鋭と思われる大型巡洋艦を発見した。これについての指示を待つ。指示がなければ、これを破壊する。
勿論、こんな美味しい話に飛びつかないわけがない。そのため、彼等には即刻本土まで接収するように連絡をし、その連絡が行き届いたことを報告する暗号も使用された。完全にこっちの流れになってきた。戦場を支配できている。
しかし、何かがおかしい。これ程の大艦隊なのだ。行動は既に偵察機や斥候、スパイ、暗号解析の成功などでバレていてもおかしくはないのだ。にも関わらず向こうは一向に仕掛けてこない。その疑問の答えのヒントは空からやってきた。
銀色の雪が晴れた11月の空に舞い降りたのだ。
「艦長!これは、アルミニウム箔です!敵機は全機爆装ではなく、これを積んでいたらしいです。これでは・・・。」
そう、奴らの狙いはこれだったのだ。電探などのレーダー機器は金属片にとても弱い傾向にある。我々の使用している最新鋭のレーダー機器であってもだ。そのためこの銀色の雪が消え切るまでは一切、レーダーで位置を確認できないのだ。そして、空は急変した。
突如として空は黒く染まり、嵐を呼び起こした。
「気象班より、このままでは航空隊が危険、速やかに収容体制の指示を。」
すぐに収容体制の指示を出した。
これにより、艦載機は発艦が不可能となった。我々は神の目と左手を失ってしまった。
そして、副将陣の横腹を刺すように新手が現れた。
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