第3章 珊瑚海開戦

第15話 激突!珊瑚海海戦

1942年9月12日 珊瑚海

横須賀艦隊司令部からの命令を受けて再編成された第二大艦隊が珊瑚海に進出した。同海域に展開する米軍第I任務部隊の詳細と正確な位置を把握したとの報を哨戒艇から受けたのだ。

第二大艦隊は旗艦を改装型敷島型戦艦 紀伊とし、空母大和含む4隻の空母群と汎用戦艦群を主軸とし、足の速い先遣水雷分艦隊を3群としている。これにより、あらゆるケースでの先頭に対処しやすくなっている。空母大和は従来の飛行甲板ではなく前世で見たことのあるアングルドデッキと射出式カタパルト、艦首脇に発艦指揮所、艦尾脇に着艦指揮所を採用することにより、離着艦作業の効率化を図ることに成功した。肝心の艦載機だが、これに関しては微妙と言いざるを得ない。戦闘機は零戦五十二型としているものの、爆撃機はまだ99艦爆を使用しているといった問題が多々ある。この艦の初代艦長は妻である根東美咲大佐が乗ることとなっっている。軽巡洋艦は阿賀野型軽巡洋艦を簡易化した衣川級大型軽巡洋艦を各分艦隊に1隻ずつ配備している。それ以外の水雷艦艇は最大35ノット以上の高速戦隊である。

今回の作戦では先遣水雷分艦隊を第I任務部隊に夜明け前ギリギリで奇襲を仕掛ける。それにより混乱した艦隊に対し4隻の空母から発艦した艦載機攻撃によりこれを撃滅する、と言った流れだ。幸運にも作戦予定日の14日は薄曇りとなったため航空隊が攻撃しやすくバレにくいと言った利益がある。

そしてその時が訪れた。


1942年9月14日 午前3時45分

先遣水雷分艦隊 第1分艦隊

旗艦 大型軽巡洋艦 衣川

「よし、作戦行動中の全艦艇に通達。『我、敵機動艦隊確認セリ。是ヲ奇襲ス。後続部隊ノ健闘ヲ祈ル。』と言っとけ。じゃあ暴れるとしようか!」」「了解。攻撃始め!」

衣川から61センチ酸素魚雷が敵艦隊を目掛けて猛進していく。それはとても静かな音であり、大きな音の始まりであった。


同日 午前4時1分 

米軍第I任務部隊 旗艦 空母ホーネット

「おい、見張り交代だぜ。」

「ああ、ありがとうジェフ。そろそろベッドで眠りにつきたいと思っていたところだよ。俺の見ていた間はまだジャップは来てないぜ。」

「そうか。じゃあ定期報告、以上なし・・・・おい、あれなんだ?」

「あれは・・・魚雷だ!」

「代われっ!こちら艦橋部見張り所。日本軍の魚雷だ!急ぎ回避を!」

ジェフが叫んだ時には既に遅かった。何故ならこの魚雷は『高速、高威力、高ステルス性能』が売りの日本製酸素魚雷なのだ。幸運にもホーネットには被弾しなかったものの、真隣のフレッチャー級駆逐艦の側面で大きな水飛沫をあげた。その後すぐに船体は真っ二つに割れた。その轟音で全員が起きたらしい。即座に第1種戦闘配置命令が発令された。しかし魚雷は一つではない。第1分艦隊から放たれた魚雷は合計20発。それが3倍されるので水雷戦隊から放たれたのは合計で60発で、それは全て例の酸素魚雷だ。この魚雷は設定距離までは潜航魚雷となり、設定距離航行すると浮上し艦艇にダメージを与える仕組みになっているのだ。その為米軍は陣形をぐちゃぐちゃになりながら逃げたり、苦し紛れの爆雷投下をしたり、あるいは動かなかったりして混乱の輪を広げていった。


同日 午前6時10分

「隊長、作戦司令部より入電。先遣水雷戦隊が奇襲に成功した模様。現在水雷戦隊は敵艦隊の一部と激しい砲撃戦を繰り広げているそうです。」

「いくら苦しかろうと我々の目標は敵艦隊にある空母と航空戦力の撃滅にある。友軍の救出はその次だ。」

「了解です。」

「では手はず通りに動けよ、お前ら。攻撃機は艦の片側だけを狙うんだ。爆撃機は艦橋などの指揮施設を狙え。戦闘機隊は一部の部隊のみ空母の発艦途中の艦載機を攻撃して攻撃部隊の仕事を楽にしろ。復唱できたやつから攻撃開始!」『了解!』

黒い点で集まった影が朝日を背にして艦隊に突入していった。

「こちらホーネット、レーダーにて敵航空部隊を確認!かなりの数だ!」

「かなり、じゃわからん!」

混乱により指揮系統が乱れに乱れいていた。

「対空戦闘始め!目標は1番近いやつだ。要するに適当に弾幕張っとけ!」

第I任務部隊の各艦艇が魚雷に怯えながらさらなる恐怖に対し無茶苦茶な対空砲火を航空隊に向ける。

「班長!全く当たりません。奴ら旧式の99艦爆だってのに!」

「文句垂れる暇あったら撃っとけ。お、2機撃墜したぞ。その調子だ。」流石に大艦隊というだけあってその対空砲火は凄まじいものとなった。これでも混乱させれているほうなのだ。本来ならもっと効率的に落とされていたに違いない。その壁を突き抜け攻撃機がホーネットの左舷に回り込み航空魚雷を投下する。3機1チームで動いているので一度にくる魚雷は3本だ。その3本は綺麗にホーネットの左舷甲板に対して垂直に突き刺さり起爆した。

その巨体は大きく揺らぎ甲板にいた兵士や艦載機を無慈悲に振り落としていく。その揺れで弱くなった対空砲火の隙間を縫って艦爆隊が来る。狙いは艦橋ただ一つのみ!250キロ爆弾が艦橋付近で炸裂し、中にいた艦長以下士官を消し炭にした。戦闘機隊は他の空母の甲板上の艦載機を20ミリ機関砲で粉砕していく。その誘爆は止まることを知らず、甲板を火の海にして行く。空母の無力化に成功し弾薬等の補給をするため航空隊は引き上げた。しかし彼らは悲劇を目の当たりにした。


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