第11話 1対80
追跡偵察部隊はかなりの時間をかけられて編成された。我々日本は新型戦闘機の試製紫電壱型を5機、零戦56型を10機、そして最新鋭の塊であるレーダー搭載型三式複座戦闘機後期型参(略称、レ三式複戦)を5機用意した。
更に回収補給艦隊を日米共用として編成した。艦隊に俺も艦隊長として旗艦を敷島とし乗艦し指示を出した。敷島の後部甲板は主砲を取り外し、試作型の空母用の甲板を増設した。離着艦を短距離で可能とする設備も取り付けられ急増ながら航空戦艦と化した。空母は建造中や大規模改修で全艦使用不能となっていた。そのため敷島以外の航空戦艦伊勢、日向、下総も編成された。それらは発艦用の下総、着艦用の伊勢と日向と役割分担をした。伊勢型航空戦艦の姉妹艦である3艦は、元々発艦しか理論上不可能だったものなので、着艦用の装備を積むと発艦ができなくなるため今回の役割分担とした。
米空軍はF4F 60機と洋上艦隊はまさかの
装甲空母エンタープライズの1艦のみだ。
集結日時を3月18日午前7時とした。
3月18日午前7時 合流地点
米空軍の見つけた痕跡で最も近い地点の海域で合流した。彼らはしっかりと定刻通りに来てくれた。甲板には発艦体制のF4Fが並んでいた。
光信号とモールス信号で作戦開始を全艦隊に通達した。日本軍の航空指揮は斎藤一大尉に一任していた。米空軍の方はジョン・カーチス少佐が指揮をしていた。米空軍は発艦したと同時に各方面に分かれて広範囲捜索をした。日本軍の部隊はレ三式複戦以外展開せず、米空軍機の補給などで空いた穴に埋めるような形で他の機体は出ることになっている。レ三式複戦には斎藤大尉が搭乗していたがその機から無線連絡が来た。
「我、目標機体を確認せり!速やかに増援のようあり。こっちに突っ込んでくる!相手は例のやつとプラスで一式戦ご随伴で3機だが爆装してるぞ!」
カーチス少佐からも同様の連絡が来た。相手は艦隊を狙っているらしい。まさか!
「洋上艦隊全艦に発令!速やかにエンタープライズを中心とした輪形陣を展開!」
一式戦が米軍のみ攻撃したとなれば日本軍が
戦闘をふっかけたとみなされかれない。
しかしF6Fのみ空戦をするらしい。
流石に1対80だ。僚艦から次々と追加部隊が発艦する。直掩機に零戦を回した。しかしそれを嘲笑うかのようにすり抜け艦隊に直進してきた。そして見事にエンタープライズの艦橋とエレベーター、甲板のみを破壊した。うち1発は格納庫に火をもたらした。爆発音が連続して鳴り響き断末魔の叫びをあげているようだった。それに追い打ちをかけるようにターンして機銃掃射を繰り返す。甲板に命からがら逃げた兵士が無惨にもミンチにされていった。これでは日本軍が攻撃したようにしか映らない。何とかして対空射撃による撃墜を試みたが全く堕ちない。
各種チューンナップされているようだ。10分ほど経ってからようやく一式戦1機を撃墜することに成功したが直後に一式戦隊は雲に消えていった。そしてエンタープライズの船体が真っ二つに割れ爆沈した。急いで救援用の小型艇を出したが兵士のほとんどが海と運命を共にするだろう。一方空では、
「くそぅ!何だこいつは!速いだけじゃない。技術もありやがる。何よりすぐに後ろを取られる。こっちが一方的にやられるばかりじゃないか!」
圧倒的劣勢だった。奴は執拗に米空軍機のみを狙い、日本軍機には牽制射撃や燃料漏れを狙った射撃を繰り返すばかりだ。既に米空軍機は30機ほど堕ちていると思われる。
「カーチス少佐、聞こえているなら部隊を引き退らせろ!貴官らは狙われている。」
「無理だ!くそっ、また後ろに!」
そう言うのを最後にカーチス機は、爆散した。
しかし、一瞬隙が出たのを見逃さず敵機の背後を取る。
「くたばりやがれぇ!」
トリガーを引いた。しかし、ほぼゼロ距離の射撃にも関わらず、奴は回避した。そしてその先にいた味方の米空軍機を攻撃してしまった。
その機は無事であるようだったがもしそのまま撃ち続けていたら同士討ちとなり大半なこととなっていた。奴は満足したようで太陽に向かうようにして空の彼方に消えていった。
戦闘エリアでは両軍共に協力を作戦完了後も怠らないように誓い合った(この時米軍は将官クラスがほぼ戦死しており、代理指揮として艦橋組で唯一生き残ったバザー少尉が担当していた)。しかしながら、この一連のことにより、日本とアメリカは深い溝を作ることとなってしまった。
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