第6話 自宅警備員、陰の権力者になります

頭からは流血で半分ほど赤く染まり、

脇腹あたりから止血したはずなのに血が止まらない。足も思うように動かない。

それでも記者陣の前に立った。

「宣言する!今ここに天皇陛下の了承のもと、首相犬養毅を中心とした悪しき政治を打破し

真の世界の模範たるべき日本の復活を!」

記者からざわめきと共に質問が飛び交った。

「朝日新聞の鷲田です。真の世界の模範たるべき日本とはどう言った意味でしょうか?現在でも日本は世界各国からかなり模範的な国として扱われておりますが。」

1番声がデカくて聞き取りやすかったのでこいつの質問に答えることにした。

「残念ながらそれは真っ赤な嘘であります。こちらの資料をご覧ください。」

それは犬養が行った悪事の全てだった。

「特にひどいのは満州の民間人の虐殺行為を指示したことです。これを彼は隠蔽しました。なおかつ彼自身は自分には非が無いなどほざいていたのです。」

当然これに反論してくる輩がいる。

「ではなぜ軍事クーデターなどを決行なさったのですか?」

全くもって想像力が無いのかどうかは知らないがおかしさのあまり笑ってしまった。

「失礼、あまりにもふざけたことを仰るもので笑ってしまいましたよ。彼らの周りもまた犬養だったんですよ。」

記者たちは唖然とした。

「現在の帝国議会、どうなってるかわかりますか?鷲谷さん。」

彼は当てられてかなり慌てていたが少しの沈黙ののちに

「・・・出来レース?全て犬養とグルだったらということですか?」

彼の意見に対して周りはどうやら否定的なようだが

「大正解!さすがは朝日新聞だな。」

彼を褒めることにしといた。

そう思うと同時に視界が少しぼやけ始めてきた。出血の影響だろう。何にせよ手短に済まさなければ。

「取り敢えず、真相は新政権樹立時に。今かなり出血多量なんで。一応新政権の面子は今ここで言っときます。」

全員が固唾を飲んで見守る。

「首相は2人、石原莞爾と東条英機の二人首相制とします。俺は彼らの相談役ポジションの新機関である管理省の大臣になりますね。事実上の副首相ってとこです。以上!」

言い切った時に肩の力がふっと消えてその場に倒れた。



2日後 都内 帝国軍病院

「・・・んぁ?よく寝たのかな?けどまだベッド硬いやん。この時代はどうしてベッドが硬いんだろうか?」そうぼやいていた時

「中将!目が覚めたんですね!」

聞き覚えのある声が室内に響いた。新島だ。

「うぃーす、元気?」

なるべくフランクに行こうとしたが失敗だった。彼女がその場で泣き崩れたからだ。

「だっで!だっで、ぢゅうじょうじんだっでおもっだんでずもん!」

もはや日本語でねぇでやんの。

流石に悪いと思い、頭を撫でてあげた。

そしてどうなったかを聞く。

どうやらこの2日間で世間の支持率は新内閣に対し86%とかなり好発進なようだ。

一応俺が死んでも大丈夫なようにあの2人には

就任時の台本を用意しておいた。その時の音声データやテレビ、新聞を見る限りちゃんとやってくれたようだ。俺がいない理由もしっかりと犬養のせいにしてくれた。そして俺は今、もう一つ残した大事なことをしなければならない。

「新島くん、いや美咲。話がある。明後日の今の時間にここに来てくれるか?」

そう、残したことを片付けなければ。

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