第2話 敷島?日露の?え、違うの?

よくわからないことだらけだが取り敢えずまとめていくと、今は昭和10年。

大日本帝国はドイツ、ソ連、イタリアと軍事同盟を締結し、アメリカとイギリスに対抗するような構図らしい。日本はその同盟国から石油などの資源をもらいまくっているので元々いた

世界線の世界大戦の日本とは違うらしい。

もっとも、彼らが仲間であり続ければだが。

そんで、そんなことを事細かに説明してくれる

(口が悪すぎる)この女性は「新島美咲」といい

名目上、特務大尉として元々俺の秘書をしてるらしい。彼女には『机の角に頭打って、タンスの角に小指ぶつけたから記憶なくなった。』

みたいなことを言ったらあっさり信じてくれた。これからその異世界ライフ初の仕事の始まりである。


同日、午前11時

横須賀海軍工廠


初仕事は新造艦の見学らしい。名前は聞いていないが『敷島』とか言っていた気がする。

敷島、この名前には二つパターンがある。

一つは日露戦争で使われた敷島、

もう一つは架空艦の大和っぽい形の戦艦、敷島でまぁ後者は1935年においてあり得ないと思っていた。なのでこの世界線ではかなり遅れている、そう思っていた。しかし、

「中将、これが敷島型高速戦艦です。」

「は?」

あまりの見当違いに驚いた。

それは後者の方の敷島だったのだ。

「ねぇ、新島くん。これ本当に敷島?」

「はい、敷島ですけど?全長350.6メートル、

全幅41メートル、最高速度は36ノット、装備は最新鋭の51糎四連装砲を前後に各2基ずつで副砲は15糎三連装砲を前後に各1基ずつ、対空設備はちょっと待ってくださいね・・・」

そう言うとファイルに挟んである資料を突き出してきた。

「中将、申し訳ありませんが説明がかなりめんどくさいので後で自分で読んでください。」

酷いくらい冷たく言われた。まぁ、ツンデレのツンの部分が永遠に続いているだけと思えばマシな気がする。

「それで?これ見て今日終わり?」

「いえ、この後はこの艦の進水式があります。

言っていませんでしたが"記憶を失う前の"中将が艦長兼艦隊司令長として乗る予定だった艦ですよ。まぁ、"記憶を失った"中将ですのでそれも白紙になるかもですが。」

若干、彼女は悔しそうだった。

多分、今までの中将と色々計画してたんだろうな。ならその意志を引き継がねば漢の名が

廃る、と思ったがそれだったら自宅警備員なんてやってないなと思ったのでやめた。

なので別の形で意志を引き継げば良いのだ。

「新島くん。俺は前の俺が何してたかは覚えてないけどこの艦からは熱い意志を感じる。だからこの艦、俺に任してくれないかな?」

キョトンと彼女はしていた。

「だって、貴方は記憶を失ってるんですよ!そんな人に艦長、いや、艦隊司令長の任を任せるのは嫌です!」

「・・・だったら、だったら軍将会議で証明してやる!」

さらに畳み掛けようとした時、

「だって・・・だって前の貴方も軍将会議に呼ばれてその任を解かれてるんですよ!」

やっと分かった。彼女が悔しがっていたのは

記憶が云々ではなく俺自身がそもそも任を解かれたことが悔しかったのだ。なら尚更だ。

「なら、もう一度やってやるよ。どうせこっちでも上の連中は椅子で踏ん反り返ってるんだろうさ。それなら楽に勝てる。」

勝算ならある。むしろそれしかない。


「軍事クーデターだよ。」


重くなった足を引きずりながら進水式へと参列した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る