4-2話 招かざる食悪魔

「南無阿弥陀仏。南無阿弥陀仏。もはやこれまで。ついぞ故郷の土を踏むこと叶わず。荒くれし今生もここで潰える。有り難い有り難い。南無阿弥陀仏。されど、今際の際に…料理が食べたかったじゃねえか…」

見知らぬ悪魔は小声でつぶやいていた。

「にゃー。キミが今日の客かにゃ。」

「う…!異世界…猫…!わりぃが放っておいてくれないか…俺は思い出を…。(…客?)」

「サラダ作って待ってたにゃ。」

「なにっ!飯!?……ああ!そうだ!俺は今日の客だ!是非食わせてくれ!」

見知らぬ悪魔は急にしゃきっと立ち上がった。

けっこう背が高い。

2m以上はある。

目がキラキラと輝いている。

「ソバユはどうしたにゃ。」といちご

「えっソバユ?…南無…あいつは遅刻すると言っていたぞ。俺は初めて来たから迷っちまったんだ。」

「そうなのかにゃ?」

「そうさ。俺はジビエ。ソバユの親友さ。猫はなんてんだ?」

「ミーはいちごにゃ。それにしてもお風呂入ってにゃかったのか?飯の前にお風呂に入るにゃ。」

「南無…すまねぇ。お言葉に甘えて、お風呂頂くぜ。セクシーすぎてすまねぇな。」

「なるほどキャラが立ってるにゃ。」

二人はベランダから部屋の中へと入っていった。


そのころ。

猫徳寺のどこかで。

「おかしいなあ…どうしたんだろう…」

ソバユが悪魔を一人おんぶしながら、空を飛んでいた。

「どういうわけか、いちごさんのマンションを見つけられなくなっちゃった…」

「住所はこのあたりなのに。なぜか、見つからないよ…ドテニも寝ちゃうし…」

ソバユの背中で、悪魔がくうくうと寝息を立てている。

「どうしよう…」

ソバユは途方に暮れていた。


「南無…まともなお風呂なんて久しぶりじゃねえか…」

すっかりきれいになったジビエはお風呂から上がった。

「髪が茹でたマリーゴールドみたいだぜ。」

さっきいちごからもらった、乳酸菌飲料(5本目)を大切に飲みながら歩いていると、

いちごが鶏肉を炒めていた。

「あれ…それはもしかして食魔界の鍋か…?」

「ああ、イドラウーズとかいう食魔界の鍋にゃ。前の食事契約報酬でもらったにゃ。」

「そこの野菜もよくみたら…驚菜(きょうな)、地金蕪(ちきんかぶ)、ハンバーグフラワー…食魔界の野菜じゃねえか!」

「それも報酬でもらったにゃ。」

報酬…?

「なんかわからんが、猫の世界で、食魔界のものが手に入るみたいだな。時代は変わったな…」

「何を言ってるにゃ?」

「…!いやいやなんでもない!」

「これで焼き鳥ができるから、座って待ってるにゃ。」

(よし…!思わぬところで飯にありつけるじゃねえか…!)


「はあはあ…どうしようどうしよう…」

ソバユは、いつまで経っても、いちごのマンションになぜかたどり着けない。

「ふあ~~。ソバユ~もう着いたの?」

ソバユの背中で寝ていた悪魔が目を覚ました。

「ドテニ!おかしいの!さっきからいちごさんのマンションにたどり着けないんだよ!」

「え~。なにそれ~。結界でも張られてるの~?悪魔よけの。」

「結界…?そんなまさか。ここは猫の世界だよ!」

「いや~。多分結界だねぇ。ドテニはショッピングモール警備員であるし、暴徒鎮圧、結界解除のプロなんだ!姿をくらまし、感覚を乱す結界の仕業だよ!」

確かにそう考えればおかしくない。

でも一体誰がこんなことを。

「とりあえず結界を…決壊さすね。」

ドテニはソバユの背中から飛び出した。

ドテニの5本の指が光り出す。

「行くよー。」

5つの光が、星の形をつくった。

「五天芒星✭…タルタル!素敵鍵(ステーキー)!!」

星が炸裂したかと思うと、パリーンと空中にひびが入り、透明な壁が砕け散った。

「あっ!あった!いちごさんのマンション!」

「よーし乗り込むぞー!ドテニとソバユの飯を確保するんだー!」

ソバユとドテニは急いでいちごの部屋に向かっていった。

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