3-3話 error~1300年ぶりの予言~

話は少し遡り、トーファが最後のカードを開いた時のこと。

最後のカードには…マークが何もなかった。

何も書いてなかったのである。

「何も書いてないにゃ。」

「何も書いてないですね。」

いちごとソバユは不思議そうな顔をしている。

「……これもしかして、トランプにあるような、カードを無くしたときに自分でマークを書き込んで代用する、空白のカードですか?」とソバユ。

「タロットでそれをやるには、公式イラストレーター並みの画力が必要だにゃ。」といちご。

「…いやー。まあ、そうかもっ。」

トーファはびくびくしながら言った。

「こういうのが出るのも、なんか、占いの醍醐味というか。未来は白紙ですよとも取れるし、さっきの判断で大体いいですよって感じにも取れるかな。ははは。」

「?????」

「??????」

いちごとソバユは渋いお茶を飲んだ時の顔をした。

大変神妙な空気になった。

「ああ!もお!すみませんでした!!もお帰ります!許して!」

トーファはすたこら逃げて行ってしまった。

「ちょっ!トーファ!何言ってるの!?すみませんいちごさんもう失礼しますね。」

ソバユも続いてすたこら帰っていった。

「こら!失礼でしょ!このポンコツ悪魔!待て!」

「にゃんだったんだ…」

いちごはため息をついて食器を洗いだした。



逃げながらトーファは確信していた。

あれは代用のためのカードではない。

その事実と動揺がテレパシーで伝わらないように、二人の前で必死にこらえていたのだ。

9,999タロットはたしかに全9,999枚だ。

だがゴールデンドロップで極稀に現れるという、存在しないはずの10,000番目のカードがあるのだ。

それはマークの無いカード、従って逆位置も正位置もないカード。

その名は“error”。

このカードの意味は詳しくは分かっていない。

だが歴史に語り継がれるほどの、大きな出来事を予言すると言われている。

例えば、新魔術の発見、恐慌、革命、老舗飲食店の閉店、これから一般化するほどの人気を得るスイーツの流行などなど…良くも悪くも大きな出来事だ。

記録によれば、最後に“error”が現れたのは、なんと約1300年前も前のこと。

私たちが生まれる100年前に終結した…

あの忌まわしき「千年食魔界大戦」を予言したという。

名前の通り千年続き、食魔界各国の食という食を崩壊させ、貧困、飢餓に導いた最大最悪の戦争を。

その爪痕は当然今も続き、食悪魔の暮らしに深い影を落とし続けている。

………………

トーファは思った。

いちごさんを、ソバユを、何が起きても守らなければと。

どっちにせよいちごさんには試練が待ってそうだ。

飯の義理、忘れるべからず。

私も覚悟を決めないとな。

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