第2話 出会い

「あ、起きた」


声が聞こえ、こうして目が覚めるまでどれだけの時間気を失っていたのかわからない。

数分?数十分?数時間?

それとも数日?


「やっほー」


目の前に背の高い金髪の女の人がいた。20歳くらいだろうか。倒れていた僕を膝をかがめて覗き込んでいた。彼女のななめ後ろには男の人がいた。こっちも背が高く肌が黒い。短髪で白い髪の強そうな体つきで片手を腰に当てて立っていた。


なんだろ…この人たち


「怪我が治ってるよ」


腕を指さされそう言われ重い体を起こして見てみると、腕の傷が内側から肉をつなぐようにして治ってきている。それと同時に茶色の斑点がなくなっていることに気がついた。


「ワームに認められて、再生能力でも貰ったのかな?」


認められる?再生能力?


腕の傷が治ってきているのはそれのおかげなのか?

"ワームに認められる"って何だ?


そんなことを考えている時に気づいた

長袖を着ていたから気づくのに遅れた

目の前にいる彼女の腕から覗かせていたのは

人間の手ではなかった。

先がとがった半透明な緑色の触手が数本、袖から頭を覗かせていた。


「ひっ…」


思わず声が出てしまい、それに気づいたのか

彼女は申し訳なさそうに言った。


「ああ、ごめんごめん。びっくりさせちゃったかなー。人間だから大丈夫だよ

ほら、腕だけ」


そう言って彼女は長袖についていたチャックを肩まで上げた。彼女の腕は肩まで全て触手になっていて、おもむろにその触手を動かした。


「おいメリッサ、あんまり知らない奴に能力を教えるんじゃない。」


「えーいいじゃーん手から出てるのでバレちゃったんだし」


「それはそうだが…」


彼がそういって横を向いたその時、彼は大きな声で叫んだ


「メリッサ!伏せろ!」


彼の声を聞き、目の前にいる彼女は体をかがめた。それと同時に銃声が聞こえ、左の壁に小さな銃痕ができた。


「なに!だれ?!」


ようやく体が動くようになった僕は体を起こして壁から顔を少し覗かせた。

少し離れたところにいたのは銃を片手に持ち

作業服のようなものを着た男だった。


「いたぞぉぉ、見つけたぞぉぉ

リーダーを殺しやがって、仲間を殺しやがって!!」


見るからに正常な人ではない感じだった。頭がおかしくなっているのか?

いやそんなことよりも、殺した?彼らが?


「確かに俺たちは殺したけど…恨むなら依頼主を恨んでほしいな、雇われの身のこっちじゃなくて」


「えーまた仕事なのー」


「こんなのただの後片付けだ、さっさと終わらせるぞ」


そういって彼は背中に持っていた金属バットを手に持ち、彼女はもう片方の袖のチャックを開き触手が刃物のような形に変形した。

そして彼らは男の方に走っていった。


速い!


金髪の彼女もそうだったが、白い髪の彼はケタ違いの速さでジグザグに走り、壁を使い三次元的な動きをしながら向かっていった。


男が打っていた拳銃の弾は当たらず、近くまで来た彼にバットで吹き飛ばされた。


男は僕の目の前に飛んできた。そしてそれと同時に刃物の腕の彼女とバットを持った彼が飛びかかり、トドメを刺そうとした。

しかし男は銃を自分の足元に捨て両手を彼らの腹に当てた


バチィ!


「がはっ!」


「うっ!」


スパーク音がして、彼らが2メートルほど吹き飛ばされた


「こっちだって腐っても組織のメンバーなんだよぉぉ、お前らなんかに負けるかよぉぉ」


「何だアイツ、エレクトロタイプの能力か

クソ!いってぇ!」


「痛いよ〜」


男が捨てた銃をもう一度拾い上げ、彼らに向かって構えた。


殺されてしまう!


男は僕に気がついていないようだった。今しかないと思い、僕は横にあった鉄パイプを拾い上げ、男の背中を思いっきり殴った。


「いってぇ!」


そういって男は銃を打ったが狙いが外れ弾は地面に当たった。男は激昂し、こちらに顔を向けてきた。


「なんだよぉぉ!誰だお前ぇぇ!!」


思わず座り込んでしまった僕に男が震えた手で拳銃を突きつける。今度は自分が殺されると思い、覚悟を決めたその時だった。


倒れていた彼が隙をついて起き上がり金属バットを思いっきり振り上げ、飛びかかった。


鈍い音を立てて男の頭にバットが命中し、その頭の中身が飛び散った。

男が倒れ、僕の服に血のついた白い豆腐のようなものがつき、一瞬気分が悪くなった。


「ありがとうな」


彼が金属バットを肩に担ぎ、そういった。


「ねえねえ!この子ウチで働かせようよ!」


いつのまにか起きていた彼女が興奮した様子でいった。


「はあ?こいつを?」


「いいじゃん、私とシュウヤだけで人手が足りなかったことだしさ、それに最低限戦えてしかも再生能力持ってるなんていい人材だよ。」


「…まあ、人手不足なのは確かだな、働かせるか。どうだお前ウチで働く気はあるか?」


彼が僕に聞いてきた。


「え…僕なんかでいいですか?」


「家族みたいなもんだ、衣食住は与えてやる、仕事はしてもらうがな」


そういったあと彼が顔を近づけて囁いた


「ここにいても野垂れ死ぬだけだぞ」


「!…は、はい!働かせて下さい!」


僕が返事をしたのが聞こえたのか、彼の後ろにいた彼女は明るい声で喜んだ。


「やったね!これで私たち家族だ!自己紹介がまだだったね、私はメリッサ、この強面のお兄さんがシュウヤ。よろしくね。」


彼女、もといメリッサが自分の触手をくねらせて言った。そして白い髪の彼、シュウヤが口を開いて僕に言った。


「お前の名前も聞いていなかったな、なんて名前だ?」


「僕は、イチヤっていいます…。よろしくお願いします。」


彼の顔に思わず緊張してしまったが、彼は気にしていないようだった。


「よし分かった。イチヤ、住んでるとこはこっちだ、ついてこい。メリッサ、帰るぞ。」


「はーい」


こんな風にして僕の生活は始まった。ワームでの生活が。

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