地の果てで蠢く蛆虫ども
カラサエラ
第1話 はじまり
防護服を着た二人の男に両手を掴まれ担がれていく
薬のせいで体が動かない
『対象を所定の位置に運んでください。』
淡々とした女性の機械音声が部屋に響く
ゴトッ
部屋の真ん中の、色が違う部分の金属製の冷たい床に置かれた。
二人の男は端のドアから出ていった。
壁に横幅が3メートルはありそうな大きな鏡が見える
どうせあそこから見ているんだろう
『刑の執行を開始します』
僕は落ちるのか
『カウントダウン開始、5秒前』
下の世界へ行くのか
『4』
僕が悪いのか?
『3』
悪いのはあいつらじゃないのか
『2』
僕は悪くない
『1』
そうだ僕は悪くない
『0』
ぶざけるな
下の床が開いた。床の下は暗かったが、穴だけ一段と、吸い込まれるように暗かった。
僕はワームホールに入っていった。
ワームに落ちていった。
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僕はライルーンで生まれた。
基本世界、ライルーン
高度な文明と広大な自然を持つ美しい場所
人工知能が考え出した徹底した法と制度
それによって造られた治安の良い平和な世界
戦争なんて今もこれからも
ないとされているいい世界
そんなところで僕は生まれた。
別に生まれが悪かったわけじゃない
両親は性格に難のないいい人だったし、僕も生まれつきの病気や体が弱かったわけでもない。勉強も飛び抜けて良かったわけでもなく、普通な人生だった。
そんなある日のことだった
あの日から全てが狂った。いや、目が覚めたのかもしれない。
いつものように夜、寝ようとした時にふと自分の足に目がいった。大きめの切り傷がついていた。
「なんだこれ?」
気にはなったものの眠かったのでそのまま寝た。
朝起きた時には全身に斑点が出ていた。皮膚に浮き出るようにしてある茶色の斑点。
大事にはしたくなかったことと、服で隠せたのもあり、僕はそのまま学校に行った。
周りの人に見られたらどうしようかとおもいながら1日を過ごし、生きた心地がしなかったけどなんとか学校は終わった。
帰ろうとしたその時だった。
「いたっ」
首の辺りに刺さるような痛みがあった。
何が起こったのか頭で理解するより前にめまいに襲われた。
そして倒れそうになったその時、車で連れ去られた。
目が覚めた時には体が動かなかった
カートのようなものに乗せられ、誰かが話しかけてきた。
「やあやあ、こんにちは。君の体を見させてもらった、ひどい体だ。この病気はどうやらLOON曰く治せないらしいんだ。」
LOON…人工知能
僕をどうするつもりだ…
「ひどい体だよ、本当にひどい。醜くて見ちゃいられない。他の人も君の病気が移ってしまうかもしれない。だから君はここにいちゃいけない。」
?
「この世界に」
………まさか
「かわいそうなことにワームへ落とすと決まった。これは上からの命令と、皆の意見だ。」
ワームに落とされる?僕が?
嫌だ…嫌だ!
「悪く思うなよ。連れて行け」
再び何かを注射され、意識を失った
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ドサ
落ちた場所は路地裏のようなところだった。
暗く、晴れているのか曇っているのかもわからない赤黒い空。
薄汚れたコンクリートの建物
下の世界、ワーム。ライルーンの下にあるとされている場所。病気、思想、人種、家系、落とすと判断された人はここに落とされる。
腕を切った、それもかなり深く
痛い
空気が濁っている…息が…
「ハッ!」
ここの空気を吸っちゃいけない!まずい、どうする、呼吸をしてここの空気が体に入ったら高確率で死ぬ!
ドクン
鼓動が大きくなったのを感じた。熱い。体の芯から溶かされているみたいに痛い。
体がだんだん動かなくなっていく、意識も薄くなっていく、死ぬのか…
意識が途絶えて夢を見た
ここに落ちたのは僕が悪い?
違う、あいつらだ
偏見と、差別で殺した
ここに落とした
………
「ねぇシュウヤーこの子見てよ、ここの深い怪我が治ってきてるよ」
「なんだこれ、再生能力か?」
「使えるかもよ」
誰かの声で目が覚めた。
死ななかったのか
この人たちは、誰だ?
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