第7話 どうしても私のせいにしたいようです

 なんとか言ったらどうだ。


 短期間に二度も同じ言葉を聞くことになろうとは思ってもいませんでした。

 それも親子から同じ言葉を聞かされることになるなんて。


 ここで「なんとか」と返し、場を乱したくなってしまうところは、私の未熟さだと痛感致します。

 もちろん、この国の令嬢として、そのようなことはせず、さて何を答えようかと考えておりました。


 するとまた、ひそひそと囁く声が……いえ、すでにそれらは囁き声とは言えないものに変わっています。

 怒号のようなそれらは、共通して私に向けられた悪意の塊となっていました。


 か弱いご令嬢だったなら、泣き出していたかもしれません。

 泣き真似をしておいた方が良かったかしら?


 けれども出ない水分を無理やり出してまで、彼らをいい気分に浸らせてあげる謂れはございませんからね。

 楽しませてから落とす、という悪趣味なことを考えることもないでしょう。

 もしかしたら、脅されて仕方なく参加されている方も……いるかどうかは分かりませんが、この先を考えますと、あまり虐めては可哀想ですからね。


 視線を泳がせながら、どなたが何を言っているか、よくよく覚えておくことにいたします。



「はじめから婚約破棄を狙っていたとは。なんと性根の腐った娘だろうか」


「母方の出自が少し良いからと驕っているのだろうよ。この国ではただの令嬢でしかないというのにな」


「バウゼン公爵家を蔑ろにするとは、考えが浅いにも程があるぞ」


「あぁ。これからは国中のどの貴族も、ギルバリー侯爵家を相手にはしないであろう。誰とも結婚出来ないのではあるまいか?」


「せいぜい妾になるくらいだろうな。金を出すというなら、相手をしてやらぬこともない」


「それはいい。そもそも金で婚約を買ったそうだからな」


「新興貴族の考えは卑しくてならんな」


「なに。もう相手がいないのだ。今度はこちらが金を貰い、仕方なく遊んでやる立場である」



 舐め回すように私の身体を這う視線が増えて、ほんの一瞬でしたが眉を顰めてしまいました。

 それを公爵様は勘違いなされたようです。



「やはりそうか。婚約破棄からの慰謝料が目的だったのだな!すると、相手の女もお前の差し金で──」


 どよめきが起こりました。

 皆様は一段と声を大きくされて私を罵ります。




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