第83話 久しぶりのリリア
帰ってきたリリアさんを出迎えるために、玄関の方に向かう。
「おかえりなさい、リリアさ……!?」
キティさんと一緒に出迎えたら、リリアさんが私達に飛びついた。私とキティさんは、突然の事に驚きながらも、きちんとリリアさんを受け止める。
「おかえり! 二人とも!」
「ただいま、リリアさん」
「ん。ただいま」
多分、この一ヶ月近く、本当に寂しかったんだと思う。リリアさんは、そのまま三分近く私達をぎゅっと抱きしめたままだった。
ようやく私達を解放したリリアさんと一緒に、リビングまで移動する。
「ギルドの方に、アルビオ殿下がお戻りになってね。ガルシアさんのところに行ったんだ。それで、アイリスちゃんやキティが帰ってきているだろうからって、カルメアさんが早上がりを許してくれたの」
「へぇ~、本当に良く許してくれましたね」
「ふっふっふっ、二人がいない間、テキパキと仕事を熟してきたからね。その努力を考慮してくれたんだと思いたい!」
前に私達が調査に行った時は、仕事に実が入らなかったって聞いていたけど、今回はきちんと仕事をしてきたみたい。
「明日、カルメアさんに訊いてみようっと」
「なっ!? そんな信用出来ないか!?」
「あはは! リリアさん! くすぐりは、やめて!」
本当かどうか気になって、ぽつりと呟いたら、リリアさんに咎められつつ、くすぐりの刑に処された。ひとしきりくすぐられると、リリアさんの標的は、私からキティさんに移った。
「次は、キティだ!」
「私、何もしてない」
キティさんもくすぐられるけど、私みたいにくすぐりに弱いわけではないらしく、無反応だった。
「キティは、くすぐりが効かないみたいだね」
「ん。アイリスが敏感」
「いや、キティさんが強すぎるだけだと思いますけど」
「ん。じゃあ、リリアも確かめる」
「え?」
リリアさんにされるがままにされていたキティさんが、リリアさんに反撃をし始めた。
「ちょっ! 待って! あははは!!」
キティさんにくすぐられて、リリアさんが笑う。こうして、何故か発生したくすぐり合戦で、私達のくすぐり序列が判明した。くすぐりに一番強いのはキティさん、そして、一番弱いのは私だった。
二人に弱点を知られてしまったので、何かやらかしたら、絶対にくすぐりの刑にされると思う。そうならないように生活しよう。そう心に決めた。
「それで、二人はどうだったの? まだ、ギルドから発表があったわけじゃないから、何も知らないんだ」
リリアさんは、アルビオ殿下がギルドに戻って、すぐに帰ってきたから、知らないのも無理はない。それに、情報が集まるかどうかの関係で、ギルドから発表があるのは、多分、二、三日先の事だと思う。
「ダンジョンに新しい階層が出来ていました。ちゃんと調べる前に、一度戻ってきましたから、どの程度の規模かは分かりませんけど、同時多発スタンピードの弊害だと考えられています」
「新しい階層!? そんな事あり得るの!?」
「多分、初めての出来事だと思います。アルビオ殿下も戸惑っていましたし、ライネルさん達も知らないみたいですから。ギルドの資料にも、そんな記述はなかったですしね」
私がそう言うと、リリアさんは瞑目して何かを思い出していた。
「うん。私も資料整理の時に、そんな事が書いてあるものを見た覚えはないや」
「ですよね。なので、アルビオ殿下も警戒していました。このまま、他のダンジョンの報告も待つのかは分かりませんけど、また調査に行く可能性はあるみたいです」
「アイリスちゃん、普通の職員としての仕事よりも戦闘職員としての仕事をしている時の方が長い気がするね」
リリアさんにそう言われて、何とも言えない顔になってしまう。そんな私を見て、リリアさんが優しく頭を撫でてくれる。
そうしたら、キティさんも私の膝に頭を乗っけてきた。この前も同じようにしていたので、本当にこれがキティさんなりの慰めみたい。
前と同じように、頭を優しく撫でる。リリアさんが私を撫でて、私がキティさんを撫でるという、謎の構図が生まれていた。
「それじゃあ、ご飯を作ろうか。二人とも疲れているだろうから、ゆっくりしておいて」
「分かりました」
「ん」
リリアさんがご飯を作りに台所に向かった。私とキティさんは、リビングのソファで、リリアさんがご飯を作ってくれるのを待っていた。暇なので、キティさんの髪の毛を梳かしたりして過ごす。
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ご飯を作り終えたリリアは、アイリスとキティを呼ぶ。
「アイリスちゃん、キティ、ご飯出来たよ」
二人を呼んでも返事がない。
「?」
リリアは、二人がいるソファまで移動する。すると、二人が寄り添い合って眠っていた。
「ダンジョン調査で疲れているだね。向こうでは、あまり休めなかっただろうし」
リリアは、アイリスの顔に掛かっている髪の毛を払って、顔色を確認する。
「今回は、悪夢とかに悩まされなかったみたい。隈も濃くなっていないし、ひとまずは安心かな」
この前の調査で発作が出ていたので、今回は大丈夫だったか密かに心配していたのだ。
「でも、ちょっとだけ細くなっているかも。キティも同じだ。やっぱり、ダンジョン内の食事だけじゃ、栄養バランスが悪いんだね。こっちにいる間に、少しでも健康になって貰おう。そうと決まれば……起きて! 二人とも!」
リリアは、心を鬼にして二人を起こす。
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ダンジョンでの疲れが溜まってしまっていたせいか、キティさんと一緒に眠ってしまっていた。そうしたら、ご飯が出来たからか、リリアさんに起こされた。
「ふぇ?」
「ん……」
「ほら、二人とも、ご飯出来たよ。ダンジョンじゃ、ちゃんとした食事なんて出来なかったでしょ。今のうちに、栄養を整えないと」
リリアさんは、私達の健康を考えてくれていたみたい。私は、私の肩に寄りかかっているキティさんを揺すって起こす。すると、ようやくキティさんも目を覚ましてくれた。
「それじゃあ、いただきます」
「「いただきます」」
私達は、リリアさんが作ってくれたご飯に舌鼓を打つ。そして、私はリリアさんと一緒に就寝した。
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