第4話 幼馴染み
扉を開けるとそこにいたのは、幼馴染みのサリア・メレノアだった。サリアは、茶色の髪をボブカットにしている女の子で、今年から冒険者として活動を始めている。
「サリア、どうしたの?」
「家に帰ろうとしたら、アイリスが、家に入るのが見えたから、ちょっとお話でもって思って」
「そうなんだ。どうぞ、入って」
「お邪魔します」
サリアの突然の来訪は、本当にいきなりだったけど、少し嬉しかった。さっきまでの寂しさが薄れていったからだ。
「今日、初出勤だったんでしょ? どうだった?」
リビングのソファに座りながら、サリアが訊いてきた。私は、冷蔵庫から冷えたお茶を取り出して、私とサリアの二人分のコップに淹れた。
「まだ、大したことはしてないけど、結構楽しいよ。同期の人にも恵まれたし。さっき、一緒にご飯食べてきたんだ」
「へぇ~、良かったね。ちゃんとやっていけそうで」
「今のところはね。そっちは?」
コップをテーブルに持っていきながらサリアに訊く。
「こっちも調子はいいよ。冒険者登録は済ませて、早速依頼を受けたし」
「何の依頼を受けたの?」
「まだ、
ギルドの等級は、石、
「丁度さっき終わって報告してきたところなんだ」
「じゃあ、早速給料を貰ったんだ」
「給料というより、報酬だけどね。冒険者のほとんどはダンジョン攻略がメインだから、まずはダンジョン行くのを目標にやっていくかな」
「じゃあ、依頼をいっぱいこなさないとね」
「そうだね」
そう言って、サリアは、私の事をジッと見てきた。何を言いたいのか分からないので、少し首を傾げる。
「何?」
「いや、あんなに恵まれたスキルばかりなのに、本当にギルド職員になったんだなぁって思って」
「今も昔も戦う事は好きじゃないからね。お母さんとお父さんをそれで亡くしてるし」
「そうだったね……」
私の両親の仕事は、冒険者だった。それも白金級だったのだ。そんな二人は、凶悪な魔物の討伐戦で命を落とした。幼い私を置いて……
「まぁ、ギルド職員になれたんだし、それは良かったよね」
「もしかしたら、ギルドで会うかもしれないしね」
「職員と冒険者としてかぁ。楽しみだね。じゃあ、私はもう行くね」
「うん。来てくれてありがとう」
「どういたしまして。おやすみ」
「おやすみ」
サリアと手を振って別れた後は、お風呂に入ってからベッドに入った。サリアのおかげで、少し寂しさが紛れたのは、本当に嬉しかった。
────────────────────────
それから三日間くらい依頼書の複製の仕事をリリアさんとしていた。それをしている内に、依頼に色々なものがある事が分かった。
普通に薬屋などからくる採取依頼や、ギルドから出される討伐依頼、行商人からの護衛依頼など多種多様だった。それに、等級制限も付くので、さらに依頼の量が多くなる。
「二人ともお疲れ様」
「「お疲れ様です」」
複写の仕事をしていると、カルメアさんが部屋に入ってきた。
「今日は、ちょっとだけ仕事を増やそうと思うの」
「新しい仕事ってことですか?」
「そうよ。といっても、そこまで大変じゃないけどね。今、複写して貰った依頼書を掲示板に貼りだして欲しいの。取りあえず、その依頼書の束を持ってついてきてくれる?」
「「はい」」
「部屋の出口に、画鋲が入った小箱があるから、一緒に持っていってね」
「はい」
依頼書の束と沢山の画鋲が入った小箱を持って、カルメアさんについていくと、ギルドの左側に大きな掲示板があった。縦が二メートル横が三十メートルくらいある。沢山依頼書を張るので、このくらいの大きさが必要になるみたい。
「一応、入口側から石、鉄、銅、銀、金、白金、金剛って順番なんだけど、白金と金剛は、依頼数がほぼないから、金と同じ場所で良いわよ。ただ、端っこの方に張っておいてね」
「「分かりました」」
「じゃあ、貼っていってみましょうか。私も一緒にやっているから、質問があったら訊いてね」
「「はい!」」
私とリリアさんは、それぞれ、自分の依頼書を掲示板に貼っていく。なるべく他の依頼書に重ならないように、既に張ってある依頼書の位置をずらしたりするので、意外と大変だ。
「ふぅ~~」
大体三十分くらいで、私が持ってきた依頼書の貼り出しが終わった。
「カルメアさん、終わりました」
「私も終わりました」
同じく、リリアさんも貼り出しが終わったみたい。
「じゃあ、戻って引き続き複写をお願いするわ。ある程度溜まったら、ここに貼り出しに行ってね」
「「分かりました」」
そう返事をして、複写の仕事に戻るために、脚を踏み出そうとすると同時に、ギルド内に大声が響きわたった。
何だか、トラブルの予感……
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