第2話 ギルドの仕事

 午後からの仕事見学は、受付業務からだった。カルメアさんの先導で、案内して貰う。


「ギルドの仕事のうち、一番重要な仕事がこれよ。冒険者達に依頼を説明したり、ギルドへの登録、報酬の受け渡しとかの色々な仕事があるわ。一番仕事の量が多くて、大変な場所よ。ここは、また今度、じっくりと説明するから、次の場所に行くわ。ついてきて」


 次にカルメアさんが案内してくれたのは、すごく異質な部屋だった。机に向かう人達が、全員鬼気迫る表情をしていた。


「ここは、ダンジョンの地図を作る部署なんだけど、精密な作業にプラスして、細かい修正が多いから、一番辛い仕事よ。根を詰めすぎて倒れる人もいるわ」


 カルメアさんは、作業中の人に迷惑を掛けないようにか、すごく小さい声で説明してくれた。私達も迷惑を掛けないように、頷くだけで返事をする。


「じゃあ、次に行くわよ」


 カルメアさんは、そう言って、ギルドの上の方に向かっていった。ギルドは全部で五階建てなので、階段で上がるのは少しだけ疲れる。


「途中の階には、色々な作業場があるわ。私達、職員用じゃなくて、別の職業の人達が使うから、それだけ覚えておいて」

「「はい!」」


 私達の元気の良い返事を聞いたカルメアさんは、ニコッと笑った。何で笑ったのかは私には分からない。もしかしたら、新人らしい行動だから、微笑ましいと思ったのかもしれない。


 そして、最上階にある唯一の扉の前に立った。


「ここが、ギルドマスターの部屋よ。今日は、タイミングよくここにいるから、二人には挨拶をしてもらうわ。まぁ、ギルドマスターとは言っても、そこまで緊張しなくて良いから」


 カルメアさんは、そう言うけど、一番偉い人といきなり話すなんてすごく緊張する。そう考えている間に、カルメアさんがノックをしてしまう。


『誰だ?』


 野太い声が、扉の向こうから響いてきた。


「カルメアです。新人の二人をお連れしました」

『入ってくれ』


 カルメアさんが扉を開けて、私達に中に入るように促す。


「「し、失礼します!」」


 私とリリアさんの声が重なった。同じようにどもってたから、リリアさんも緊張しているんだと思う。


 中にいたのは、筋骨隆々で黒い短髪の男性だった。見た感じの年齢は、四十代くらいかな。


「おう、よく来たな。新人の採用は、人事部に任せてるから、初対面になるか。俺が、この街の冒険者ギルドのギルドマスター、ガルシア・ドルメイオンだ。よろしくな」

「「よろしくお願いします!」」

「息ぴったしだな。結構大変な作業があるが、無理はしないようにな。確か、そっちの……アイリスだったか? お前は、戦闘系スキル持ちだったな?」

「は、はい!」

「そうなると、周辺地域の調査を任せることもあるから、その覚悟だけはしておいてくれ。一応、戦闘指南なんかも受けられるから、頼みたくなったらカルメアに言ってみるといい」

「分かりました!」


 私が、そう言うと、ガルシアさんは、満足そうに頷いた。


「勤務中は、今、着ている制服を絶対に着用してくれ。もしもの時を考えて、色々な付加効果があるから、そんじょそこらの服よりも丈夫だ。スカートも中が見えないように、ショートパンツを履くようにしているから、少し派手に動いても大丈夫だろう……多分!」


 今までの話から、ガルシアさんの性格というか、人となりが分かった気がする。すごくいい人みたいだ。


「最初は、依頼書の書き写しから始めるんだろ? 頑張れよ」


 ガルシアさんはそう言ってニカッと笑う。


「じゃあ、私達はここで失礼します。行くわよ」

「「失礼します!」」


 カルメアさんの指示通りに私達は、部屋を出て行った。


「まぁ、ああいう人よ。基本的に、私達従業員のことを第一に考えているわ。だから、必要以上に緊張しなくても大丈夫よ」

「「はい」」

「取りあえず、案内はここくらいにしましょうか。今後、何かあれば、随時説明していくわね」

「はい!」

「お願いします!」


 カルメアさんは、最初に仕事をした部屋まで先導してくれた。


「じゃあ、午前と同じように、依頼書の複写をお願いね」

「「はい!」」


 カルメアさんが部屋から出て行き、私とリリアさんは、午前と同じ机に座って、複写を進めていった。


 ────────────────────────


 夕方まで働いていると、カルメアさんがやって来た。


「今日の仕事は終わりよ。お疲れ様」

「はい。お疲れ様です」

「お疲れ様です」


 リリアさんと私は、カルメアさんと向き合って頭を軽く下げる。


「明日も今日と同じ時間から、同じように複写の仕事をしてもらうから、そのつもりでいてね。しばらくの間は、この作業しかやらないから、そのつもりでね」

「「分かりました」」

「それじゃあ、また明日ね」


 カルメアさんはそう言って、部屋から出て行った。


「じゃあ、帰ろうか」

「そうですね」


 私とリリアさんは、更衣室に向かう。制服から、私服に着替えるためだ。そこで、改めて分かった事がある。それは、リリアさんの胸が、想像以上にあったということだ。私の何倍なんだろう……


 心に若干のダメージを負いながら、裏口からギルドを出た。


「ねぇ、アイリスちゃん」

「はい?」

「今から夕飯、一緒に食べに行かない? ほら、親睦会みたいな感じで」

「良いですよ」


 私とリリアさんは、親睦会も含めて一緒に夕飯を食べに行くことになった。

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