第5話

「ほら、起きろよ」


 布団で爆睡しているマリナを揺さぶり、マリナを起こす。

 だが、中々起きずにこのままだとただ時間を減らしてしまうだけだと思ったので俺は頭をつかった。



ほわーん


「何このいい香り!!」


 隣のキッチンから朝食の匂いがやってきたので、マリナは飛び起きた。



「もうすぐできるから待って」


 キッチンを覗くマリナの姿を目にした俺はそう言ったあと、フライパンに手をかけた。


 俺はフライパンで踊る食パンにかき混ぜた卵を注ぎ込み、きび砂糖を振りかけた。

 マリナはフライパンから香りだされる甘い香りと、一瞬見えた卵の存在に期待を抱く。


 わくわくして待ち切れないマリナはキッチンにあるダイニングテーブルの椅子に腰を掛ける。

 身長が低いマリナには床まで足が届かないので足をぶらぶら揺らして待ち遠しそうな顔をしていた。



 「はい、完成」


 俺は完成したフレンチトーストがのった皿とフォークをマリナに渡した。

 そのフレンチトーストはふわふわの仕上がり、味がよく染み込んでいて実に美味であった。


「甘いのだな、こんなものもあるのか」


 マリナは頬に手をあて、あっという間にそれを平らげてしまった。

 食べ終わった後のマリナがもじもじしていたので、俺はもう一皿彼女に差し出した。


 マリナは唇を軽く結び、頬を赤らめてフレンチトーストを受け取った。

 俺もマリナと一緒にフレンチトーストを食べ、直様学校の仕度をした。



「どこいくのだ?」


「学校」


「何だ?それは」


「勉強」


「何だ?それは」


「女神なら、そんなことだって魔法で学べばいいんだよ」


「お前は頭がいいな!そうするのだ」


 テンポの良い会話を交わしたあと、マリナは部屋を後にし、外へとでかけていった。


 俺もカバンを手に持って部屋を後にした。

 玄関から出て扉をしめると、一人の少女の姿があった。


「佑弦、おはよ」


 彼女は高坂七菜乃、クラスで一番、いや学年で二本の指に入るほどの美少女と噂の俺の幼馴染だ。

 身長は女子では少し高めで、真っ黒なロングヘアーとやらの髪はいつも手入れが整っていて俺が入部する予定だった吹奏楽部に所属している。


 そして七菜乃は今日も朝一緒に登校するためにこの場所までやってきたのだ。


「最近トランペットどう?」


「いい感じだよー音ブレとかなくなってきたしね」


 二人は他愛もない会話を交わしながら学校を目指していった。




―その頃、マリナは


「ほうほうほう」


 なんとマリナは公園のベンチに座って新聞を読む控えめそうなおじさんの頭をぺたぺたと触っていた。

 おじさんの頭は実に寂しく、つるつるとしたさわり心地だったがなんとも言えない。


「んー」


「えーっと……」


 動揺しているおじさんなど気にせず、マリナはらだひたすらに頭をぺたぺた触っていたのだった。


「感謝するのだ、ありがとうなのだ!」


 一時すると何かに満足しておじさんに礼の言葉を言い、手をふって公園を後にした。



「おおおおお!」


 マリナの前にはオムライスのサンプル品が置かれた店があった。

 その店に小走りで近寄り、サンプル品とマリナの間に憚るガラスがマリナの頬を平らにした。


「ぐぬぬ…これが、本物のオムライスなのだな⁉」


 ―彼女は今日も平常運転だ




 俺はあいつが来て平凡を掴み取ることはもう二度と出来ないと確信した。だが、それと同時に平和を手に入れたように感じた。



 俺と彼女の日常はここから描かれるのだった―

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神の嫌がらせ〜オムライス作るから世界征服だけはやめてくれ〜 しゅう @kagi0716

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