第38話 子供たちの秘密基地 6
突然目の前からオーガが消えてしまい、エレノアはあわあわと慌て始める。
まだ肝心な話をまったくしていない。
そこに、エレノアそっくりの女の子が現れる。
『エレ、興奮し過ぎ。あのオーガはビビリ君。エレの声に驚いて、あっちに転移して行った。』
ドラゴンの姿のままでは洞窟に入れなかったため、エレノアそっくりの姿に人化したテディが、ある方向に向けて指を指す。
「あ、いた。」
転移が使えないエレノアは、体に身体強化をかけて、カーロに向かって走り出した。
カーロはパニックに陥っていた。
あのエレノアと名乗った、人間の子供の意図が分からない。
やはり自分は狩られてしまうのかと、膨大な魔力の塊のエレノアたちから逃げることにした。
広い楽園という名のダンジョンの中で、エレノアとテディに追いかけまわされ、カーロが降参するまで、そう時間はかからなかった。
「何故逃げるの!」
『お前たち、怖い!!』
「失礼な!みんな可愛いって言ってくれるもん!!」
『自分たちの魔力と威圧を自覚しろ!!』
『確かに、エレは怖い。エレに勝てるのは神様くらい。』
「テディ、酷い!」
そこにはカオスが出来上がっていた。
ぎゃんぎゃん怒鳴りながら走り続けて、疲れてしまったカーロとエレノアは、花畑の中に座り込んで、急に笑い始めた。
『壊れた?』
その横でテディが、失礼なことを真顔で呟いていた。
「ダンジョンって、人間にあまり知られていないよね?」
走り回ったエレノアは、リラックスモードになっていた。
『そうかもしれんな。俺も生まれてそう経っていないから昔のことは分からないが、昔はこんな感じのダンジョンがそこら中にあったらしい。希少なものが手に入ったり、宝箱なる物が存在するダンジョンもあったらしい。』
「ここは違うの?」
『ここは、俺がタクトに会う前は、石が採れるだけのただの洞窟だったのだよ。』
「え!?」
カーロの話は、意外なものだった。
ある日、運命に導かれるように、人を避けて暮らしていたカーロが、ベイリンガル侯爵領の近くまで出かけた。
そこで、タクトに会い、テイムされた。
タクトを自分の住処である洞窟ダンジョンに招待したいが、もてなすものなど何もない。
特別な能力のある石があるだけの、ただの洞窟だ。
悩んでいるカーロに、ダンジョンコアが話しかけてきた。
最近この近くでは、魔力の動きが活発になり、魔素が濃くなってきていて、その影響で自分も少しずつ力を蓄えることができている。
自分の分身を外に連れ出して、ダンジョンの中に再現したい景色を見せてくれれば、ダンジョン内に、花畑でも、川でも、森でも再現して見せよう、と。
そこからカーロとタクトの楽園作りが始まった。
そして、ダンジョンは今の形になり、外で人や強い魔物たちに怯えながら暮らしていた魔物たちを招き入れ、更に広がり続けている・・・ただし、ダンジョン内の景色は、すべて幻であると。
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