第37話 子供たちの秘密基地 5
『子供?』
姿を現したエレノアに、カーロは戸惑いを隠せなかった。
タクトとその友人たちが身に着けていた、強い魔力を纏った何か。
自分のテリトリーに近付いてくる、大きな2つの魔力の塊。
そのひとつが、こんなに小さな、タクトと同じくらいの子供だなどと、カーロは想像すらしていなかった。
タクトら子供たちから自分たち魔物を排除するために、自分を狩りに来た戦いに熟練した大人だと思っていた。
タクトたちのために、このテリトリーを守るために、ここに住むすべての仲間のために、争うことが嫌いなカーロではあったが、戦うことを覚悟していたのだ。
それが、目の前に現れた侵入者が、こんなに小さな子供だとは。
驚くカーロを他所に、エレノアが口を開く。
「驚かしてしまったのなら、ごめんなさい。知りたいことがあって、あなたとお話がしてみたくて、タクトたちに私が祈りを込めたお守りを持たせたの。少し私とお話してくれませんか?私がここに来たことは、タクトたちには秘密です。この楽園にもあなたたちにも、何もする気はありません。ただ、知りたいことがあって、来たの。」
『・・勝手に話すがいい。俺が何を言っても、何をしても、お前には絶対に勝てぬ。俺はお前に従うしかない。』
「そんな、そんな悲しいこと言わないでください。私はあなたを攻撃したりしません。タクトは私にとっても大事な
『・・カーロだ。見ての通り、突然変異種のオーガだ。ここ楽園で暮らすようになると、魔物はすべて青くなる。』
「カーロさん。お話をする機会をくださり、ありがとうございます。私はエレノア・ベイリンガル。この近くにある辺境の地を治めているベイリンガル侯爵家の4人目の子供で唯一の女の子です。ちょっとだけ魔法が得意な、ごく普通の子供です。」
『普通の定義が分からん。いつの間に人間はそれほどに強くなった。』
「・・さぁ?」
前世の記憶があるなどとは誰にも話せないエレノアは、惚けた。
『まあいい。それで、知りたいこととはなんだ?』
冷静に丁寧に言葉を選びながら話していたエレノアであったが、胸の中は期待に膨らみ切っていて、今にも弾けてしまいそうなほどに、ドキドキしていた。
「ここの正式名称は、楽園、ではありませんよね?」
『ああ。タクトは僕らの秘密基地と読んでいるな。』
エレノアの緊張が膨れ上がる。
「それでは、あなたたちはなんと呼んでいるのですか?」
『・・・ダンジョンだ。』
呼吸の仕方を忘れたように両手で胸を抑え、口をぱくぱくしながら蹲り、全身震え出したエレノア。
何が起きたのか分からず、心配してエレノアに近付こうとするお人好しのカーロ。
カーロがエレノアに声をかけようとした途端、両手を天井に突き立てながら、エレノアが叫んだ。
「ダンジョン、キタ ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!!!!!!!」
至近距離でのエレノアの有り得ない程の大声に吃驚したカーロは、思わずエレノアから数百メートル離れた場所まで転移した。
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