第35話 子供たちの秘密基地 3

「行くよ!」


タクトが声をかけると、青いフォレストウルフ達が一斉に岩に向けて走り出した。


「うわあああああああ~!!!」

「きゃあああああああ~!!!」


「・・・あっ・・?」

「あ・・れ・・・?」


岩にぶつかったと思った次の瞬間には、目の前に大きな洞窟があった。


「驚くのは、まだ早いよ!」


タクトが楽しそうに、声を弾ませる。


青いフォレストウルフ達は、洞窟の中を奥へ奥へと走り続ける。

いくつもの分岐点を走り抜け、階段を駆け下りた。


その先には、ありえない光景が広がっていた。


「うひょおおおっ!!!」

「ふわぁ・・綺麗・・・」


洞窟を下ったはずなのに、そこには美しい花畑があり、その向こうには緑豊かな森が広がっていた。

天井には、太陽まであった。


「ようこそ!僕と魔物達の楽園へ!!」


タクトが得意満面な笑顔で言った。


「すっげぇ~!!」

「わぁ~、ここが楽園・・素敵!」


感動して、スライムとゴブリンと一緒になって、走り回るサムとミラ。

それを見て、思い切って打ち明けて、連れてきてよかったとタクトは思った。


今までもがいたから寂しくはなかったけれど、同じ思いを抱える仲間に喜んでもらえるのは、嬉しかった。






サムとミラが楽園で大はしゃぎしているのと同時刻。


3人が飛び込んで行った岩の遥か上空に、3人の行方をずっと追っていたものたちがいた。


「あー、あれ、なんだか分かる?」


『幻術。』


「いや、そうなんだけど。それは分かるんだけど。気配がねぇ・・・これ以上近付くと、見つかりそうだし、どうしようかしら。」


『ふふっ、強そうなのがいっぱい。でも私とエレだったら、楽勝。』


「いやいやいや、そうなんだけど!その好戦的な性格直しなさいよ!」


『エレのやらかしに比べたらマシ。』


「なんでそういうところ、ベアトリスに似るのよ。あのね、多分あの中には、タクトがテイムしたオーガがいると思うのよ。だから攻撃は無し!」


『ふぅん?じゃあ、エレもタクトに連れて行ってもらう?』


「それは・・だめよ。せっかくの子供たちの楽園なんだもの。子供たちには知られないで中に入りたいわ。」


『エレも子供じゃない。じゃあ、タクトにエレの魔力を纏わせる?凶悪な奴なら、自分のあるじに何をするって怒る。話が分かる知能がある奴なら、纏わせた魔力のぬしのエレだけが訪ねても、話を聞く耳をもってくれる、かも?』



数日前、エレノアはドラゴンたちと遊んでいた。


重力魔法と風魔法の応用で空を飛べるようになったエレノアが、実践で技術を磨くんだ!と言って、空を飛べる仔ドラゴンたちと追いかけっこをしていた際、前方不注意で木に激突して落っこちた。

落ちた先の木の枝の上に座って、怪我をした体に治癒魔法をかけ、破れてしまった服をどうしようかと悩んでいたところに、学校が終わった3人が来て、今回の楽園訪問の内緒話を始めてしまったのだ。



「さすがテディ。そのアイデアいただき!」


(これはもしかすると、もしかするかもしれない♪)


エレノアは上機嫌だった。

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