第33話 子供たちの秘密基地 1

ベイリンガル侯爵領は総人口約1,300人。

エレノアが無双を始めて領地が豊かになってから、生まれる子供が増えてきた。

5歳以上の子供たちには、学校へ通うことが義務付けられた。

希望があれば、大人も通うことができる。


この世界の1週間は7日。


授業は午前中だけ。

3日は将来のための簡単な知識。読み書きや計算、この世界の地理などと、役に立つ日が来るか分からないが一応簡単なこの国の歴史。


他の3日は選択授業。

多様な魔法の授業、商人になるための授業、薬草学や医学、武術、料理、裁縫、領地経営に参加するための授業、芸術やダンスの授業、ベイリンガル侯爵領には無いが、冒険者ギルドに登録して冒険者になりたい者のための授業等を、毎月張り出されるスケジュールから選んで受けることができる。

こちらは誰でも受けることができ、子供に魔法使いになって欲しい親が、赤ん坊を連れて魔法の授業を一緒に受けることもある。


午後は家の手伝いをする子供が多かったが、毎日家の手伝いをしなくてもいい子供たちもいた。

その中に、その3人はいた。

同い年の彼らは同じ悩みを持っていて、あっという間に仲良くなってつるむようになった。


悩みとは、エレノアのようなドラゴンテイマーに憧れて必死に魔法の勉強をしたのに、テイムできたのが他者には歓迎されない魔物であることだった。


「俺、スライムしかテイムできないんだ。でもさ、可愛いんだよ、こいつら。以外に頭も良いしさ。」


に反応したスライムに、体当たりを受ける男の子、サム。


「私・・テイムできたのがゴブリンなの。テイムする魔物を探して森の近くを歩いていたら襲われそうになって、思わず「テイム」って唱えたら、テイムできちゃって。でもね、この子、いつも私を守ろうとしてくれる優しい良い子なの。」


頭からすっぽりフードを被っている、小柄なを撫でる女の子、ミラ。


そして、もう1人の男の子タクトも、自分の秘密を打ち明ける。


「僕は・・驚かないでね。テイムできた魔物がオーガなんだ。彼物凄く強いのに自分が狩られる側だってことが分かっててさ。絶対に人が住んでる領域に来ようとしないから、いつも僕が森の奥に会いに行ってるんだ。」


「「森の奥!?」」


「あ、いつも彼の配下が迎えに来てくれるから、大丈夫なんだ。これは彼等と僕だけの秘密なんだけど、森の奥には楽園のような場所があってさ。もしよかったら、君たちも来てみる?」

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