作品1-2
それを母に贈って五日も経たない日であったと思う。私は母と喧嘩した。私が大切にしていたある紙を、母が勝手に捨ててしまったからであった。
「なんで捨てちゃったの!」
感情を高ぶらせた私が珍しかったのか、母も珍しくたじろいで見えた。
「紙一枚でそんなに怒らないでよ。大体、床に落ちてたんだから、ゴミにも見えるわよ。」
私は手近の新聞をつかみ、一杯に振り上げた勢いで机の上を打った。 ぱんっ と風船が割れるような音が居間に響いた。視界が一瞬なくなった。母との距離が遠くなったように感じた。机の上に飾られてあった手製の写真立てがその弾みで床に落ち、折れて転がったその脚はとても痛々しく見えた。
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