5.勇者強過ぎ、方針転換!!
「グゴオオオオオオオオオ!!!!」
ワイバーン、そして邪竜であるサーペントドラゴンが咆哮しながら突進してくる。座り込んだままのエスティアが思う。
(無理無理!! あんなの無理ゲーだよ!! 逃げの一手。『暗殺者、勝てない
しかし目の前に立つレインを見て思う。
(でも私もパーティのひとり、ここで逃げ出したりしたら……、ちょうどいい機会。さすがの勇者だってあんなの相手に簡単には……)
そう思っているとクルセイダーのマルクが持っていた盾を前に出して叫んだ。
「全防御、オーバーシールド!!!」
マルクの声が響く。
しかし何も現れない。だが異変は直ぐに起きた。
ドンドン、ドン、ドン!!!!
突然上空から突入してきたワイバーン達が、空気の壁にぶつかって混乱し始める。突如動きが制限された竜達が叫び出す。そんな叫び声を聞きながらローランが魔法を詠唱した。
「炎神イグニスの契約により発動せよ! ヘルフレイム!!」
(えっ、炎神!?)
ローランが魔法を唱え終えると、空壁の向こうで灼熱の業火が巻き起こり、あっと言う間にワイバーン達を黒焦げにして地表へと落とした。エスティアが思う。
(炎神イグニスって、さ、最上級神のひとりじゃん……、凄い……)
「グゴオオオオオオ!!!!!」
しかしそんな空壁や炎が収まると、唯一生き残ったサーペントドラゴンが大きな叫び声を上げながら突入してきた。ローランが言う。
「レイン、あと頼むわよ」
「ああ」
レインはそう小さく返事をするとその場から一瞬で消えた。
ドン!!!
(え、ええっ!?)
消えるレインに驚くエスティア。そして上空で響いた爆音に顔を上げると、そこにはサーペントドラゴンの頭を一刀両断するレインの姿があった。
「う、うそ……」
ドラゴンの上位種でもあるサーペントドラゴン。そのドラゴンを剣で一刀両断にしたレイン。ドンと音を立てて地面に落ちるサーペントドラゴンの隣に降り立ち、レインは笑顔でこちらを見る。エスティアが震えながら思う。
(見えなかった。この暗殺者の訓練を受けた私が、その動きすら見えなかった……)
剣を収め、こちらに歩いて来るレインを見て思う。
(あんなの無理……、無理、無理っ!!! 絶対ナイフとか普通の方法じゃ殺せないよ!!! 勇者、頭おかしいぐらい強いじゃん!!!!)
エスティアが立ち上がって決意する。
(で、でも
エスティアはあまりに強過ぎた勇者を見て自信を無くす一方、新たな作戦に切り替えて暗殺する事を決意した。
「おかえりなさい! 皆さん」
「討伐ご苦労だった。これより自由にしてくれ」
基本依頼がある時以外は自由行動。各々が部屋に戻って行く中、マルクがエスティアに言う。
「あ、あのぉ、大丈夫だった?」
「ん? ええ、大丈夫だったよ。ありがと」
笑顔で答えるエスティアを見てマルクの顔が赤くなる。戦闘中は鉄壁の防御を誇るマルクだが、普段は年下という事もありまるで子供の様だ。マルクが言う。
「よ、良かった。初めてだったから怖かったかなって、思って。あ、ごめん。エスティアも冒険者だよね……」
エスティアは何でこんなに顔が赤くなっているのだろ、病気ではないかと思いつつマルクに答える。
「みんな強くてびっくりしたわ。じゃ、私、部屋に行くね」
「ああ、あ、うん。またね……」
何か言いたそうなマルクを残してエスティアは教えられて部屋へ行く。
「はあ……、ちょっと簡単に考えすぎていたな……」
エスティアはベッドの上に寝転がると、改めて『勇者暗殺』の難しさを実感した。正面突破は到底無理。でもやれることはやらなきゃならない。魅了するには時間がかかるとして、今できることと言えば……
そう思うとエスティアは部屋の引き出しにある暗殺道具の中から、小袋に入った薬包紙を手にする。そして直ぐに部屋を出て、屋敷の調理室へと向かった。
(私は暗殺者。どんな方法を使ってでも対象を抹殺する。やれることは……、すべてやる!!)
エスティアは屋敷の廊下を早足で歩きながら、額に汗を流した。
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