第105話 あなたたちまで
「クッ……ハアァッ!」
「私を止めるですって? はッ! 逃げて守ることしか能のないあなたに、できるはずないじゃない!」
御月は
「そうだな……。確かに私は、守って逃げることしかできない」
大空はよろよろと立ち上がりながら、御月の言葉をあっさりと肯定する。それは、自分の実力を分かり切っているがゆえの潔さだった。
「だったら……」
さっさと諦めろ、御月がそう言いかけたとき。
「だが、今は私一人ではない!」
大空は手にした鏡を御月に向けた。
その鏡が一瞬光り輝くと、次の瞬間には大空の姿は消えていた。
「どこに……どこに行ったの⁉︎」
御月は周りを見渡す。
先ほど大空が使った鏡は
「隠れていないで、出て来なさい!」
大空が周囲のどこに隠れていても聞こえるように、御月は大声で叫ぶ。間違いなく、この森の中に誰かは隠れている。御月はその気配を感じ取っていた。
ヒュンッ
風を切る音がするのとほぼ同時に、御月は首の後ろに手を回し、飛来してきた物を掴み取った。見ると、それは矢であった。矢尻は細く軽く、殺傷能力は無いに等しい。また、その先端には薬品が塗られていたようで、液体がポタポタと滴っていた。
「強力な麻酔を染み込ませた毒矢……でも、狙いに迷いがあるわよ……」
次の瞬間、御月は大きく
「今度は電気ショックで気絶させるつもり? ……でも、いつもみたいに動きにキレがないわね」
御月は瞬時に攻撃してきた人物とその場所を見極め、二つの光線を放つ。森の奥へと放った光線は、矢を射ってきた人物の周囲の木を切り倒し、その姿をあらわにした。正面に放った光線は、御月を襲った機械の片腕を破壊した。
「クッ……!」
「うわぁっ!」
御月を攻撃してきた人物二人は、それぞれに叫び声を上げる。
「はぁ……」
御月はため息と共に、その二人の姿を見た。
「あなたたちまで私の邪魔をするのね……。
御月を襲った人物。それは、ずっと彼女と一緒に戦ってきた幼馴染、雅輝と大智であった。
「御月さん……もうやめましょう、こんなこと」
雅輝は悲しそうに御月を見つめていた。その手には弓が握られてはいるが、もう矢を放つ気配はなく、ただ無気力にだらんと下げられていた。
「みっちゃん! オレ、オレ……! ヤだよ……死んじゃイヤだよッ!」
大智は泣いて顔をぐしゃぐしゃにさせながら叫んでいた。
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