第89話 来いよ白黒野郎!
草木を
自分も
走る真一の耳に、激しい戦いの音が聞こえてくる。金属がぶつかり合う音、
「彩華さん!
茂みを抜け、
の姿をその目に捉えた。
不気味な悪鬼だった。
分類は
「こいつが上級悪鬼か……!」
今までシミュレーターで戦ったことがある
人型悪鬼には、本能のみで動く下級悪鬼と違い知性がある。こちらの能力や戦い方を分析し、考えながら戦う。それに、個体ごとに固有の特殊能力もあり、それらは
だが、それがどうした。
真一はそう考えていた。
要は特殊能力を持つ人間との戦闘と同じこと。それならば
今の自分の強さなら、確実に勝てる!
「前に出過ぎるな、真一!」
真一の後方から、鋼太が叫ぶ。
「おおよその事情は彩華から聞いた。加勢はありがたい。だが、これはチームでの戦いだ。一人では勝てんぞ!」
「……分かってます」
真一は振り向くことなく返事をする。
「さぁ……来いよ白黒野郎!」
真一は剣を構えた。
一人で突っ込むことはしない。最初の構えは防御の姿勢。相手の出方を
左右バラバラに動く悪鬼の両目はついに真一を捉えた。そして首をカクカクと左右に振ったのち、手を前へと突き出した。
「⁉︎」
気がついた頃には、悪鬼の手は真一の眼前すれすれまで届いていた。真一は体を横に倒し、すんでの所でそれをかわす。
何が起こっている? 悪鬼が瞬間移動したのか?
その疑問はすぐに解決された。見ると、悪鬼はその場を動くことなく、腕だけを伸ばして、真一に攻撃を仕掛けてきたのだ。
「なるほど……そうと分かれば!」
真一は悪鬼に向かって走り出した。
悪鬼は続けて反対側の腕を伸ばし、真一に攻撃を仕掛ける。しかし、それは剣によって受け流される。
手が伸びるならばきっと……。
そう考える真一の読みは当たった。
悪鬼は続いて脚を伸ばして攻撃を仕掛けてきた。攻撃の予測ができれば、どんな技もさほど驚異ではない。真一はそれさえも受け流し、さらに悪鬼へと近づく。
人型である以上、残されたもう一方の足は攻撃には使えない。体を支えられなくなってしまうからだ。真一はそこを狙い、剣に魔力を
いける……!
『うごおおおおおッ!』
ぐぐもった低い悲鳴を上げ、悪鬼はバランスを崩して倒れていく。
これで決める!
真一は堅牢剣の力を解き放ち、光の刃を出現させる。
「やめろ! 真一!」
「
鋼太と彩華の叫び声が聞こえる。しかし知ったことか。この悪鬼は自分が仕留める。
「放て! 堅牢剣!」
光の刃は悪鬼の中心を正確に捉え、真っ二つに切り裂いた。
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