第87話 命を軽んじるようなことを言わないで!
「
真一は
「あの人に一体何ができるって言うんだ……」
昔は強かったかもしれない、しかし今の彼女はただの病人。何もない所で
「何ができるかは分からないけど」
ミノリが口を開く。
「みんなで話し合おう。一人で悩んでちゃ、絶対ダメ。
「なぁミノリ……」
真一はミノリの話を遮った。
「どうして君はそんなに僕によくしてくれるんだ?」
真一はずっと思っていたことを口に出した。
「君にとって僕はただのC級隊員。たくさんいる
真一の言葉を聞いても、ミノリは驚いた様子は見せなかった。彼女はただ、静かに真一の言葉に耳を傾ける。
「こんな僕に、一体何の価値があると言うんだ……」
真一は最後にそう言葉を漏らした。
「そんなことを思っていたんだね」
ミノリはゆっくりと口を開く。
「言ってくれてありがとう」
ミノリは、座っている真一と目線を合わせるようにしゃがみ込む。
「真一はね、昔のお姉ちゃんに似ていたの。SOLAに入ったばかりなのにすごく強くて、かっこよくて、初めての
昔の御月に何があったのか。真一はそのことが少し気に掛かったが、特に口を挟むこともなく、ミノリの話を聞き続けた。
「お姉ちゃんは、それでも大丈夫だった。何とかなった。それは、
「結局何だよ! お姉ちゃんお姉ちゃんって! あんたも……あんたも僕を見ていないのか! 僕じゃなくて、僕の中の御月さんを見ているのか!」
真一は立ち上がり、ミノリを責める。
「……違う! ごめん、違うの。私は真一を……!」
「何が違うもんか! あんたは僕なんてどうでもいいんだ! そんなにお姉ちゃんが好きなら、勝手にしろよ!」
真一はそう言い捨てて控え室を飛び出した。
「待って真一!」
ミノリも急いで彼の後を追う。
「お願い待って真一、今のままじゃ真一は……!」
「今のままじゃどうなるって言うんだ? 悪鬼にでもなって、みんなに殺されるのか?」
「……そうならない、とは、言えない状況になってるの……」
「それならそれでいいじゃないか。殺したければ殺せ」
「死んでもいいの⁉︎」
「こんなクソみたいな人間、死んだって誰にも迷惑かからないだろ!」
「本当に……本当に殺されちゃうかもしれないんだよ?」
「もういいんだよ、しつこいな! 僕がどう生きてどう死のうが、僕の勝手だろ!」
バシィッ!
二人のいる廊下にこだまする音、そして流れる沈黙。遅れてやってくる頬の
「……はっ?」
「そんな……自分の命を
真一は、ミノリが声を荒らげるのを初めて見た。彼女の目には少しの涙が
それ以上に、真一は衝撃を受けた。
ぶたれた。
ぶたれた。
SOLAで唯一信頼できたかもしれない彼女にぶたれた。
もう終わりだ。だめだ。僕はこの組織ではやっていけない。
「ごめんミノリ……ごめん」
真一は少しの間とぼとぼと歩いたのち、家の近くへと通じるゲートへと走り出した。
「真一……真一!」
ミノリもその後に続き、彼を追って走り出した。
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