第79話 根性鍛え直してくるよ
「いただきます」
真一は、炊飯器に残った米と昨晩の夕食で残った
星野家の朝食は家族が
朝食を済ませ、食器洗いを済ますと、真一は洗面台へ向かう。そこでバシャバシャと顔に水をかけると、鏡を見た。多少気持ちが前向きになったとはいえ、
「戦ったって、死ぬわけじゃないのにな」
真一は
「S級のみんなと隊長は、SOLAに入る前から死ぬかもしれない状況を経験していたんだよな」
そう考え、真一は自分と相手との覚悟の違いを改めて実感した。甘かった。覚悟も、意思も、何もかも。考えれば考えるほど、勝てる見込みがない。
「それでも……『男には、負けると分かっていても戦わなければならないときがある』……か」
真理奈に向けていった言葉を、真一は再び思い出す。このセリフを言ったキャラを、真一は知らない。セリフも間違っているかもしれない。どんな場面で言ったのかも知らない。そのため、真一はこのセリフを自分なりに解釈した。
負けると分かっていても戦う。これはつまり、『逃げたくない』ということだろう。逃げた臆病な自分より、勇敢に戦った自分を誇りたい。きっと、そういうことだ。つまりはプライド。なるほど、確かに女性には理解されにくいだろう。しかし、真一も男だ。ある一定の理解はできる。
「そうだ。戦う。戦うんだ。他の誰でもない、僕自身のために」
怖いが、もう迷いはしない。
「行ってきます」
なるべくいつも通りにそう言った。特に気合を入れるでもなく、普段通りに。そして、
「ミノリ……」
彼女はしゃがんで石畳にできた傷をなぞり、悲しそうな顔をしていた。その傷は、以前に真一が
「真一、心配したんだよ。
そう言うミノリは、いつも通り
何が心配なものか、お前はS級。
そんな思考が真一の頭をよぎる。
やはり僕は、いい人ではない。
真一は一度目を閉じ、深呼吸をして、再び目を開ける。
「ありがとう、ミノリ。心配かけたな」
真一は悲しそうに笑った。
「大丈夫、なの?」
「大丈夫じゃないかもしれない。あの後、七志に会ったんだ」
「……」
ミノリは何も言わなかった。おそらくミノリもそのことには気づいていたのだろう。
「あいつ、僕のダメな所とか嫌な所とかを散々指摘してきてさ。そのせいで色々とまいってた。……もしかしたら、今日の戦いで、僕は僕じゃなくなるかもしれない……」
「……どういうこと?」
「僕の中にいるんだ。凄く自己中心的で、周りの全てを見下しているような精神が。そいつに乗っ取られるかもしれない。だから、試してくる。僕が僕のままでいられるかどうかを。もしもそんな弱い精神に負けるようなら、大智との戦いで、根性
今ここに真理奈がいたら、また
「……」
ミノリはやはり何も言わない。もしかしたら彼女は、真一の言っていることを何一つ理解していないのかもしれない。しかしそれでも、何か強い決意を込めての発言であることは
「行ってくる」
そう言って、真一は鳥居の前に立った。恐怖も不安も恥ずかしさも、全部背負って戦ってやる。そんな決意を込めて、真一は合言葉を唱える。
「
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