第73話 如意鞭天の能力
「先手必勝! 私から行くよ!」
バチィ!
鞭は痛々しいまでに高い音を立てて地面を打ち、石で出来た床を粉砕する。これをまともに食らえば真一はその瞬間に二回戦敗退が決定してしまうだろう。
「まだ終わらないよ!」
彩華は再び鞭を振り、連続攻撃を仕掛ける。
「ほらほらほらほらぁ!」
鞭を打つ音が何度も会場に響き、観客たちは耳を塞ぎ、舞台の床は傷だらけになる。しかし、真一は常に彩華から一定の距離を保ち、鞭が当たらないように立ち回っていた。
「やるね
彩華は
真一はこの瞬間を待っていた。今まで攻撃を避け続けていたのは、彩華の鞭の長さを計るためだ。真一が今の場所から一歩後ろに飛びのけば、鞭は当たらない。そこから彩華に突進攻撃を仕掛けようと考えていたのだ。鞭という武器はその性質上、中距離への攻撃には適しているが、
振り下ろされる彩華の攻撃を見定め、避けるタイミングを計る。しかし、彩華はそれが分かっていたかのようにニッと笑った。何と、彩華の鞭が直前で
「⁉︎」
真一は驚き、
「一体、何が起こったんだ……⁉︎」
事前に試合を見て計った鞭の長さと、実際に体感した距離とを総合的に考えて導いた間合いの計算に狂いはなかったはず。それなのに、彩華の鞭はそれ以上に長かったのか。
「あはは! 真ちゃん考えてること分かりやすすぎ!」
「何だって?」
「私の鞭の長さを計って、ギリギリで避けようとしてたんでしょ? 私と戦う相手ってみんなそうだからさ」
「……」
悔しいが、彩華の言う通りだった。真一の立てた戦略は正攻法であるが故に、相手にも読まれやすかった。
「でも残念。その作戦は私の『
「⁉︎」
今までの彩華の戦いで、彼女はその武器をただの鞭としてしか使用してこなかった。しかし、あの鞭も
「如意鞭天はただの鞭じゃないの。『
「まさか……
「ピンポンピンポーン! 大正解!」
何ということだ。これでは真一の立てていた戦略が通用しないのみならず、彩華には遠距離から近距離まで苦手な間合いが存在しないことになる。
「まぁ能力はそれだけじゃないけど、残りはこれからのお楽しみってことで!」
彩華は余裕そうに笑いながら鞭を手元へ戻し、再び構えた。
「さぁ真ちゃん。試合の続きをしようか……!」
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