第66話 ここからが本当の勝負だ!

 振り下ろされた光の剣は轟音ごうおんと共に石畳の床を深くえぐり、数十メートル先まで続く爪痕つめあとを残した。

 観客席からは歓声や悲鳴が沸き上がり、実況の鉄也てつや晶子あきこも驚きの声を漏らす。

鋼太こうたの大技が炸裂! これには流石の真一もひとたまりもない! 一回戦の勝者は早くも決定か?』

『いえ、真一くんの反応はまだシミュレーター内に残っています。反応は……あそこからです!』

攻撃によってできたクレーターから数メートル離れた位置に小さく上がる土煙があった。そこから出てきた一つの人影。真一である。

『何と真一! 先ほどの攻撃を受けてなお立ち上がる! 彼の耐久力はどうなっているんだ?』

『いえ、真一くんは傷ついていますが、あの攻撃を受けたにしてはダメージが少なすぎます。つまりこれは……』

『あの攻撃を回避したって言うのか⁉︎』


「ギリギリだったが、何とか間に合った」

そう言う真一を見て、鋼太は笑う。

「と言うことは、分かったんだな?」

「あぁ、僕にもできたぞ。あんたの使った高速移動が!」

真一は剣を地面に突き刺した。

堅牢剣けんろうけんの能力は、防御した時にエネルギーを吸収し、攻撃時にはそのエネルギーに魔力を乗せて放出するというもの。これと同じことを受動的にではなく能動的に、防御にではなく攻撃に転用したのがこの技だ」

次の瞬間、真一は消え鋼太は剣を構えた。


 ガキィィィィン!


 金属音が響くと共に、鋼太は後方に吹き飛ばされた。そして、先ほどまで鋼太がいた位置には剣を振り抜いた真一が立っている。これは紛れもなく、先ほど鋼太が使ったものと同じ技である。

「地面に剣を突き刺した時の衝撃をエネルギーとして吸収し、それを放出することで推進力を得て突進する。分かってみたら単純な技だ」

吹き飛ばされた鋼太は真一の攻撃を完璧に防ぎ切っており、ほとんどダメージを受けていない。

「正解だ。だが、どうして気が付いたんだ?」

「移動する前にあんたがいた場所にできた不自然な地面の傷だ。あんなところに傷ができる理由は、自分から地面を刺したからとしか考えられない」

「よく見ているじゃないか」

技を見切られたというのに、鋼太は少し嬉しそうだった。

「さぁ、ここからが本当の勝負だ!」

真一は再び地面に剣を突き刺した。

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