第65話 こっちから行くしかないよなぁ!

 何だ、今の攻撃は?

 吹き飛ばされた真一は、ひたいから流れる血を拭う。

 あの高速の攻撃は今までの鋼太こうたの戦いでは見たことがなかったものだ。一体どうやって……?

 鋼太の方に目をやると、彼は相変わらず余裕そうな表情で剣を構えており、動く気配はない。何度か同じ攻撃をしてくれたならば、技の仕組みが分かると思ったが、どうやら簡単に技の分析を許すほど鋼太は甘くないようだ。そうなれば。

「こっちから行くしかないよなぁ!」


『おぉとっ! 真一くん飛び出した!』

『さぁて、何か作戦でもあるのかな?』

鉄也てつやたちの実況など気にもせず、真一は水平に構えた剣を鋼太の胴を目がけて振りかざす。しかし、そんな攻撃を鋼太が予測していないはずもなく、あっさりと防がれてしまう。

 でも……それでいい!

 真一は剣が防がれたときの反動を利用し、足を軸に半回転、そのまま鋼太の逆側の胴を狙う。鋼太の大剣では、すぐさま逆の胴を防ぐことはできず、真一の隙を突こうにも、防御の反動で少しの時間は動けない。これなら攻撃を当てられるはず。そう考えていた。


 ガンッ!


 響くのは鈍い金属音。見ると、真一の剣は鋼太の剣にぶつかっていた。

「そんな攻撃、俺が予想してないとでも思ったのか?」

そう言う鋼太の声は、真一の頭上から聞こえてくる。見ると、鋼太は地面に刺さった剣の上に立っていた。


『なんと! 鋼太は真一の攻撃を飛び上がって避けたぁ!』

『これは上手いですね。防ぐのではなく回避し、更に剣を支点に飛び上がることで、空振りした真一くんの攻撃はその奥にある剣に当たる。これで鋼太さんは真一くんの攻撃を二回分防いだことになります。攻撃を防ぐたびに攻撃力が上がる堅牢剣けんろうけんの性質上、今は完全に鋼太さんが有利になっていると言えますね』


「まだだ!」

真一は剣を持ち直し、鋼太に向かって斬り上げようとした。


ドガッ!


しかし、その前に鋼太の蹴りが真一のあごに入り、後ろに大きく飛ばされる。舌をむことはなかったが、脳が揺れるような強烈な一撃。剣術だけでない、鋼太は格闘技まで習得していたのだ。

 真一は何とか体勢を立て直すも、剣を構えた鋼太がすでに眼前にせまって来ていた。真一も急いで剣を構え鋼太の一撃を防いだが、やはりその攻撃はとても重く、体が宙に浮く。こうなってはもう身動きを取ることはできない。その瞬間を待っていたかのように、鋼太は剣を大きく上に振り上げる。


「放て! 堅牢剣!」


 鋼太は堅牢剣に蓄えたエネルギーを解放し、巨大な光の剣を真一に向けて振り下ろした。

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