第63話 総天祭本戦一回戦
多くの隊員たちが見守る巨大なスタジアムに、花火とファンファーレの音が鳴り響く。立体映像によって映し出された石畳の舞台は予選と同じく一切の小細工を許さないシンプルな作りとなっており、選手入場の前にも関わらず凄まじい熱気に包まれている。その熱気を更に盛り上げるように、
『始まったぜ
『本戦は全員参加の予選とは異なり、一対一のトーナメント形式を採用しています』
『単純明快で分かりやすい形式だ。本戦も予選と同じく、シミュレーターを使っての対戦だぞ。総天祭は安心安全がモットーだ!』
『それでは、一回戦を戦う二人の入場です!』
晶子のナレーションの後、舞台の片方の端から煙が吹き上がる。それと共に、鉄也の熱烈な選手紹介が始まる。
『最初に入場するのはこの人! SOLAに入隊して数週間。しかしその圧倒的な戦闘センスで予選を勝ち抜き、見事本戦出場を果たした期待の新人! 本大会唯一のC級隊員、
煙の中から、真一は堂々と入場する。すると、会場中から若い歓声が湧き上がる。
「頑張れー!」
「応援してるぞー!」
「きゃー! 真一くーん!」
思わぬ声援に真一は驚いた。観客席を見ると、そこにはC級で訓練を共にした隊員たちがいた。
「みんな……」
それを見て、真一は自分が総天祭に参加した当初の目的を思い出した。
(そうだ。最近は
会場全体から見て、C級の真一を応援する人はわずかかも知れない。しかしそれでも、真一には十分だった。
(僕は今、間違いなくC級のみんなの希望なんだ! この試合、絶対に勝つ!)
『そして、そんな真一くんと対戦するのはこの人です!』
晶子のナレーションと共に、再び煙が吹き上がる。
『鍛え上げられた肉体、幾多の戦闘経験、いつも冷静に守ってくれる頼れる兄貴分。A級隊員の中でもトップレベルの実力者、
鋼太が入場すると、真一の時とは比べ物にならないほどの野太い歓声が響く。
「おおおおおお! 鋼太! 鋼太! 鋼太! 鋼太!」
多くの観客たちが声を揃え、一様に鋼太を応援する。そのビリビリと肌を刺すような声に、真一は息を
『両者、舞台の中央へ』
鉄也の指示により、真一と鋼太は互いに距離を詰める。
「まさか……」
鋼太がゆっくりと口を開いた。
「あの時会った少年が、ここまで来るとはな。本当に驚いた」
そう言う鋼太の顔は、少し嬉しそうだった。
「だが、勝利を譲る気はない。悪いが全力で潰させてもらう!」
「僕だって……!」
真一も負けじと言い返す。
「負けられない理由ができたんです。例え鋼太さんと言えど、絶対に倒します!」
二人は静かに
緊張感が高まる二人の様子を見て、鉄也と晶子は顔を見合わせ、静かに
『『総天祭本戦一回戦。始め!』』
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