総天祭本戦
第62話 総天祭本戦当日の朝
「あなた、朝っぱらから気合い入れすぎじゃない?」
妹の
「気合い入れすぎと言えば、その格好どうしたんだ?」
真一は真理奈に向かって問いかける。彼女はいつも、この時間は寝巻きのままなことが多い。しかし、今は着替えを完璧に済ませており、その格好もオシャレをしているように見える。パステルカラーのゆったりとした半袖のトップスに、丈の短いショートデニム、髪はポニーテールにまとめられ、明らかに気合いが入っている。それはファッションに
「今日も友達と一緒に勉強するの。だから、もうすぐ出なきゃ行けないの」
「ふーん……」
(その友達って、まさか彼氏じゃないだろうな?)
一瞬そんな考えがよぎったが、言うのはやめた。妹が誰と付き合おうと自分には関係ない。
「それじゃ、行ってきます」
真一はそう言って、玄関の扉を開ける。すると、目の前に一人の少年が立っていた。
「うわっ!」
「おっと!」
真一と少年は、お互いに驚いて一歩後ろに下がった。そこにいたのは真理奈よりも少し年下くらいの黒髪の少年で、何やら重そうな
「君……もしかして、真理奈に用がある?」
「あ、はい。今日は一緒に勉強する約束をしていて……」
(何だ、友達ってやっぱり男じゃないか……)
「え、えーっと……」
少年は何か困っているようだった。それもそうだ。友達に会いに来た所に、その家族と会ってしまったのだ。気まずくもなる。
「僕は真理奈の兄の真一。ちょっと待ってね、すぐに真理奈を呼んでくるから」
真一は再び家の中に入り、真理奈に呼びかける。
「真理奈―。友達が来てるよー!」
「えっ、もう来てるの? 早いのよ……分かったわ、今行く」
真一はその返事を聞くと、もう一度外に出た。
「あとちょっとで真理奈は準備できるって」
「はい。ありがとうございます」
少年は礼儀正しくお辞儀をして、真一の言葉に応えた。
「それにしても……」
真一はその少年の姿をよく見た。
「君、どっかで会ったことある?」
その少年の顔立ちに見覚えがあったのだ。顔は割と整ってはいるが、これと言った特徴はなく、どこにでもいるような普通の少年。
「えっ? どうでしょう? 近所に住んでいるので、会ったことはあるかもしれないですけど……」
少年は慣れない敬語で話す。どうやら真一に会ったことはないらしい。見覚えがあるのも、おそらく真一の勘違いだろう。
「そうか。ごめんね。気のせいならいいんだ」
そうこうしているうちに、真理奈が
「ごめん
透弥。それがこの少年の名前か。
「ううん、お兄さんと話してたらすぐだった」
「って言うかねぇ、あなた来るの早すぎるのよ」
「ごめんって。時間になるまで外で待ってようと思ったら、お兄さんが出てきたから……」
「なるほど、そういうことね。じゃぁ、行きましょうか」
そう言って、二人は並んで歩き出した。
「俺、最近また変な夢を見るんだよねー」
「変なって、また真っ白なお化けの夢?」
「うん。それに黒いお化けもたくさん出てきて……」
「あなたもう四年生でしょ? まだお化けが怖いの?」
「違うって!」
「本当にぃ?」
そんな話をしながらも、二人が笑い合いながら歩いていく姿を真一は見ていた。真理奈は自然と誰かと仲良くなれる。それが少し
「それにしても、あの透弥って子の顔、どこかで見た気がするんだけどなぁ……?」
しかし、どれだけ記憶を
「まぁ、誰かに似てるとか、そんなもんだよな」
真一はそう自分を納得させ、SOLAへと通じる神社の
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