第61話 誰と戦っても格上相手
『 』VS『 』
テレビの中では一回戦の組み合わせを決めるスロットが高速で回転し、ミノリと
「ちょうどいいタイミングだったみたいね」
「すごいねお姉ちゃん。ピッタリだったよ」
「ふふ、
「うーん、やっぱり
「そうね。あの一回戦は事実上の決勝戦みたいなものだったし、大智も悔しがってたものね。今度はお互い、途中で当たらないことを願いたいわね」
「うん。ねぇ、真一は誰と戦いたいとかって、ある?」
ミノリは真一に話を振った。
「……」
しかし、真一は返事をしない。
「真一?」
心配になって、ミノリは彼の顔を
「ッ……!」
ミノリは息を
無理もない。と、ミノリは思った。初めての
テレビの画面では今、二つのスロットの内の片方が止まった。
『
「……ッ⁉︎」
真一の体に緊張が走る。
テレビの中では、
『一人目は真一くんですか』
『今大会唯一のC級隊員だな』
『つまり、誰と戦っても格上相手ということになりますね』
『そうだな。さぁ、もう一人ももうすぐ決まるぞ』
次第にスロットは回転を緩めてゆき、やがて動きを止めた。
『星野真一』VS『
「……鋼太、さん?」
真一はただ目を見開き、小さく口を震わせた。
『おぉ。これは面白い対決になりましたね』
『最高だな! 同じ
『そういう事になりますね。ですが、A級の鋼太さんとC級の真一くんではかなりの実力差があるように感じますが、その点についてどう考えますか?』
『戦闘経験や体格では圧倒的に鋼太が有利だ。だが、真一は入隊して間もないのに予選を勝ち抜く程の戦闘センスがある』
『なるほど。ベテランの経験が勝つか、若い才能が勝つか。注目の一戦ですね』
『あぁ。さぁみんな。繰り返すが一回戦は三日後、予選と同じスタジアムで行われる』
『戦いの結果をみなさんの目で確認してくださいね』
テレビの放送はそこで終わった。
真一は画面の方を見たまま固まっている。それを見たミノリは、真一に何と声をかけていいのか分からずにいたが、御月はからかうように笑いかける。
「うふふ、どうしたの? さっきまではあんなに強気だったのに。B級への昇格は諦める?」
「……ッ!」
真一はガタッと立ち上がり、御月に食ってかかる。
「ふざけるな! 誰が相手だろうと絶対に勝ってやる。鋼太さんだろうがS級だろうが、全員ぶっ倒して勝ち抜いてやる! 見てろ隊長。優勝して、あんたから昇格の証をもらってやるからな!」
真一はミノリの方に向き直り、決意を込めて語る。
「見ててくれミノリ。僕は絶対に優勝する。君がS級の二人を応援していたとしても構わない。僕は君と一緒に七志と戦うためにも、絶対に勝つよ」
そう言って真一は病室を後にした。残されたミノリと御月は、真一が出ていった後の扉を眺めていた。
「ふふふ、可愛いわね。真一くん。からかい
「もう、お姉ちゃんたら」
「ねぇ御祈。真一くん、もしかしてあなたの事が好き何じゃない?」
「えぇ? どうしてそうなるの?」
「だって、あまりにも熱く御祈に宣言するんですもの。可愛いわね。初恋かしら? ねぇ、御祈はどうなの?」
「やめてよ。私は……」
ミノリは御月の方に向き直り、彼女の手を取る。
「私はね、お姉ちゃんの話を聞いて思ったの。お姉ちゃんは命をかけて七志と戦った。きっと、たくさんの命を削ったんだよね。だから私は、そんなお姉ちゃんを守るためにも、今よりも強くなりたいの」
笑顔はなく、ただ真剣に御月の目を見つめてミノリは宣言した。
「ありがとう御祈。あなたが私を支えられるくらい強くなる日を楽しみにしているわ」
御月は優しくミノリの手を握り返し、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます