第39話 あなたが要になります

 走り出した真一は、七志ナナシ対峙たいじしているみんなの元に辿たどく。

「遅くなってゴメン。僕も一緒に戦う!」


 そう言って武器を構える真一に、みんなは次々に声をかける。

「事情は伺いました。今は一人でも多くの味方が欲しかったので、ありがたいです」

雅輝まさきは、真一の方をチラリと見てそう言ったのち、すぐに七志の方を向き、弓に矢をつがえた。

「今までサボってた分の仕事はしてもらうからね!」

大智だいちは真一に、いたずらそうな笑顔を向ける。

しんちゃんヤッホー! 一緒に頑張ろうねぇ!」

彩華あやかはそう言いながら両手を広げて真一に飛びつこうとするが、それは鋼太こうたによって止めらててしまった。

「彩華、今は戦闘中だ。……真一、よく来てくれた。だが、やつは強い、覚悟はいいか?」

鋼太は武器を構え、再び七志の方へと向き直る。


「やァ、シンイチ。随分と遅い登場じゃないカ。心の準備はできたのカイ?」

七志は宙に浮き、真一たちを見下ろしながら語りかける。

「今更一人増えた所デ、僕に勝てると思ったのカナ?」

「うるさい」

真一は、剣の切っ先を七志に向け、堂々と宣言する。

「僕は、みんなと戦いたくてSOLAに入った。見ているだけなんてもうゴメンだ。だから何があろうと、僕はここにいるみんなと一緒に、お前と戦う!」


 雅輝も大智も、鋼太も彩華も、みな心は一つだった。そして、もちろん真一も。その時、真一の耳にかすかに聞こえていたミノリの音が、少しだけハッキリと聞こえて来た。それがどんな曲かまでは分からなかったが、少しだけ、力が湧いてきた気がした。


 しかし、状況が悪いことに変わりはない。これだけ戦っているのに七志には傷一つなく、疲れている様子もない。それに、まだ全力を出していないような、不気味な余裕さえ見える。それに対して、こちらは消耗していた。疲労は蓄積し、傷はひどく痛み、残りの魔力も少ない。この状況では、七志を徐々に追い詰めていく作戦は取れない。それならば、一気にとどめを刺すような作戦を実行するしかないのだ。

 この中で一番体力と魔力が残っているのは僕だ……だから、僕がなんとかしないと!

 真一はそう思い、剣を強く握りしめた。


「ダメですよ、真一くん」

真一の考えを察したのか、すかさず雅輝が止めに入る。

「ミノリさんから言われたんじゃないですか? 一人でなんとかしようとしないで、、と」

「でも、みんなボロボロで!」

「分かっています。なので、今から実行する作戦はあなたがかなめになります。しかし、あなたで成立する作戦ではありません」

「作戦?」

真一は疑問に思った。

 真一はさっきみんなと合流したばかりだ。作戦なんて考える暇もなければ、みんなで話し合う余裕なんてなかったはず。なのにどうして作戦なんて立てられたんだ。

「細かく説明している時間はありません。あなたはあなたのできることを、精一杯やってください。今伝えられるのはそれだけです」

真一には、雅輝の言っていることがよく分からなかった。しかし、それ以上に、一緒に作戦に参加できることがとてもうれしかった。


「色々作戦を立てているみたいだケド、どうダイ? ボクに勝てそうな作戦は思いついたカナ?」

七志は本当に危機を感じていないという様子の余裕を見せていた。そして、不敵に笑いながら真一たちに手を向ける。

「さァ、もっと足掻あがいテ、もっと苦しんデ、キミたちの心の力の高まりを見せてくれヨ!」

そして、手のひらに炎を集め、再び巨大な火の玉を作る。


 あの火の玉を、真一は防いだことがない。もしもあれと一人で向き合っていたら、真一は絶望し、力なく立ち尽くしていただろう。しかし、今は一人ではない。

「おい真一、防御は俺たちの役目だ。全力であれを防ぐぞ!」

真一の横に立った鋼太は、力強く言い放った。真一もそれに応えるように、言葉に気合いを込める。

「はい! 絶対に防ぎましょう、で!」

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