第34話 最後の悪鬼

「どうしたんだイ? シンイチ。ボクに剣なんか向けテ。またボクの後ろに悪鬼でも現れたカイ?」

真一はうつむいたまま、剣の切っ先を七志ナナシに向け、ボソリとつぶやく。

「なぁ七志。いくつか質問してもいいか?」

「……いいヨ」

「僕たちが最初に倒したあの鳥型の悪鬼。どうしてあのタイミングで出てくると分かった?」

「何となくサ。普通は観客を待たせるようなことはしないダロ? 大体のタイミングくらい分かるサ」

「鳥型であることもか?」

「当てずっぽうで言っても当たるものダネ。正直自分も驚いたヨ」

「二人で協力して倒してもいいってこともか?」

「あァ、テツヤさんたちがやりそうなことを考えたラ、推理できたサ。そう言ったダロ?」

「当たるかよ! そんなに連続で! 事細かに!」


 真一は叫び、涙を浮かべながら七志をにらみつける!


「なぁ七志、お前とは今日会ったばかりだけど、この総天祭予選では相棒だと思ってたよ。でも……でもお前、怪し過ぎるよ……!」

真一は再び俯き、地面には涙がにじむ。

「疑いたくなかった、相棒を信じたいと思ってた、でも……もう無理だ。なぁ七志。やっぱりお前のこと知らねーよ。C級に。最近入隊したばかりなんてうそなんだろ? そんな数日でシステム作った人の癖なんて分かるかよ!」

更に力を込めて、切っ先を七志に突き出す。

「おい……お前さっき何で悪鬼の攻撃を避けなかった⁉︎ 避ける気さえななったって感じだったぞ! 当たらないって知ってたんだよな? いや違う! ! そりゃずっと悪鬼の攻撃が当たらない訳だ……それにな、七志……俺、シミュレーターに入る前に、会場でお前の姿を見てないんだ。目立つだろ、そんな真っ白な格好。見落とすはずないんだ。だからお前は……シミュレーターの中に、突然現れたことになる」

息を荒らげる真一に対して、七志は至って冷静に答える。

ひどいことを言うネ、シンイチ。そんなの推理とは言えないヨ。根拠もないし、全部言いがかりで君の気のせいかもしれないじゃないカ? ……デ? 君は結局何が言いたいんダイ?」


 真一は、怒りとも悲しみともつかない表情で七志を見つめ、一言ずつ絞り出すように言った。

「……悪鬼の出現タイミングが分かって、悪鬼に狙われず、シミュレーターの中にしかいない人物。……お前が、なんだな?」


 真一の言葉を聞いて、七志はニヤリと不気味に笑った。

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