第31話 ここだ彩華! よく狙えよ
煙と共に現れた悪鬼の大群を見て、
「協力して倒してもいいのか。そうと分かれば……おい彩華、いつも通りにやるぞ」
彼はそう言って、さっきまで彩華がいた方を振り返ったが、そこにはもう彼女の姿はなかった。
「はっ? おい、彩華、どこだ⁉︎」
あたりを見回すと、巨大な蛇型悪鬼の前に彩華がいるのを見つけた。
「あいつ……また勝手に行動して……」
そう言って、鋼太は走り出した。しかし、彼が向かった方向は彩華がいる方とは逆だった。
彼が向かったのは、悪鬼は点在するが、まだ他の隊員たちはあまり来ていない開けた場所だった。他の隊員に手柄を横取りされる心配こそ少ないが、悪鬼はある程度密集しているため、少しでも気を緩めればすぐにやられてしまう。そこはそんな場所だ。
鋼太は優秀な戦士ではあるが、S級隊員のように一人で何体もの悪鬼を倒せるような実力を持っている訳ではない。そして、そのことは鋼太自身も分かっていた。
「ここがちょうどいい……さて、俺がやれる事をするとしよう!」
鋼太は彩華のいる場所と自分の周りの状況を確認し、立ち止まる。すると、カマキリのような悪鬼が、大きな鎌をかかげて鋼太に襲いかかった。鋼太はそれを剣で受け流し、体勢の崩れた悪鬼を払いのけた。次は鳥型の悪鬼が突進してきたが、それも必要最低限の動きで受け流す。
次も、その次も、鋼太は悪鬼の攻撃に対して決して反撃はせず、防御に徹し、攻撃を受け流した。
そうすることで、生じる隙を最低限にとどめられ、この悪鬼に囲まれた状況でも戦いを続けることができた。やがて、鋼太の動きに釣られて、さらに多くの悪鬼が彼の元へと集まってくる。
「こんなもんか……」
彼の周りに十数体の悪鬼が集まったとき、鋼太は高く飛び跳ね、悪鬼の輪の中から抜け出した。
「ここだ彩華。よく狙えよ」
おそらくこの声は彼女には届いていない。しかし次の瞬間、彩華によって巨大な蛇型の悪鬼が放り投げられた。それは
そして、着弾による爆風と共にそれらの悪鬼は消滅した。
「ストラーイク、だな!」
鋼太はガッツポーズをとり、得意げに笑った。
その後、ピコンという電子音と共に、鋼太と彩華の目の前に十五と書かれた画面が表示された。
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