第17話 お前のための武器だぜ!

「真一、お前さっき検査を受けただろ? あれ、ただの健康診断じゃないんだぜ?」

「違うんですか⁉︎」

「ああ、お前の身体能力を調べると同時に、潜在的な適性を調べさせてもらった。ほれ、これが結果だ」

鉄也てつやは真一に一枚の紙を手渡した。見るとそこには、真一の体力や知能レベルなどが事細かに分析されていた。真一は勝手に色々と自分のことを調べられたことに対して、若干のいら立ちはあったが、それ以上に自分の能力について知りたいと思った。

「で、この結果はどうなんですか? この心機しんきとか魔力の適正とかは数値で見たってよく分からないんですが。そもそも心機矢魔力って何なのことですか?」

すると、鉄也はニッと笑った。

「よくぞ聞いてくれました。だが、魔力の説明の前に、心機について説明をしなきゃいけない」

そう言うと、鉄也は手元にあったスイッチを操作した。すると、床からホワイトボードがせり上がってきた。鉄也はそこに「心機」と書くと、真一に質問をした。

「真一、お前も鋼太こうたの剣を使ったろ? あれも心機の一つだ。使ってみてどうだった?」

真一は昨夜のことを思い出した。初めて剣を使って、悪鬼の攻撃を防いだときのことを。

「自分の中から、エネルギーが消費されていく感覚がありました」

「そうなんだよ」

「そのときに使われたのが、僕の中の魔力なんですか?」

「いや、

「全然ないんですか?」

「全くない。だって、あったらそれは魔法使いだろ? お前は魔法使いなのか?」

「いや、違いますよ……でも、診断結果には魔力量がはっきり数値で書いてありますよ?」

「それはお前が心機を使った時に扱える魔力の量だ。元々お前にあるわけじゃない」

「じゃぁ、僕が感じたあの感覚は……」

鋼太の剣を使ったときに感じた、自分の中から何かのエネルギーが急激に消費されていく感覚。あれは絶対に気のせいではない。

「それは、が使われていたんだ」

鉄也はホワイトボードに「心の力」と書いた。

、それが心機だ。そうして生み出された魔力によって、心機はそれぞれ固有の能力を発揮する」

鉄也はホワイトボードに「心の力→心機→魔力(能力)」となるように書き足した。


「さぁ、ここからが本番だ。お前も気になっていたお前自身の潜在的な魔力の量だが、なんと歴代の隊員の中で二番目に多かった!」

「歴代で……二番目?」

今まで、何をしても当然のように一番であった真一にとって、二番目であるということは新鮮な驚きがあった。

「おいおい、一番じゃないからってへこむなよ。言っておくが、歴代一位は別格だ。いわゆる『天才てんさい』ってやつだからな、比べるのも馬鹿らしいぜ」

「天才」「一番」これらは、今まで真一自身に向けられた言葉だった。それが自分ではなく他の誰かに向けられ、なおかつ「それと比べるのも馬鹿らしい」とまで言われてしまった。真一は、自分の中でその誰かへの闘争心が静かに湧き上がってくるのを感じた。

「その、歴代一位の人って誰なんですか?」

SOLAさ。もっとも、そう簡単に会える相手じゃないけどな」

「そうですか……」

真一は不服そうだった。自分を超える人物がいるなら、会ってみたいと思ったからだ。


「さぁ話の続きだ! 次にお前の心機への適性だが、何とお前はあらゆる心機に適性があった。だから、ここにあるどんな心機も使いこなせるぞ!」

さぁ、存分にみて回れと言わんばかりの鉄也であったが、もう、真一の心は決まっていた。

「僕が使いたい心機は決まっています。鋼太さんが使っていた剣をください」

迷いのない目で鉄也の目を見る真一。鉄也はそれにニヤリと笑って応える。

「そう言うと思って、ちゃんと用意しておいたぜ」

鉄也は再び手元のスイッチを操作した。すると、床がせり上がり、ガラスケースが現れた。

「これは……」

真一は息をのんだ。

「鋼太が使っていたのは、鋼太用に形状や重量を調整したもの。そしてこれは、真一の身体能力、潜在能力から割り出したデータによって調整された、新しい堅牢剣けんろうけんだ」

ケースに入っていたのは、まるで竹刀のような形状をした剣。刀身は特殊な青い結晶のようなものでできており、六角形のつばがついている。

「これが、僕の武器……!」

「そうだ。お前専用の、お前のための武器だぜ!」

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