第16話 ようこそ真一、俺の研究室へ

「私たちの仲間にならない?」

ミノリは、真剣な目で語りかける。コップに付いた水滴が流れ落ち、机の上に小さな水たまりを作る。ミノリは目をらさずに、まっすぐに真一の目を見つめている。

「分かった。仲間になるよ」

「……えっ?」

あっさりと答える真一に、ミノリは驚いた。

「えっ? 本当にいいの?」

「あぁ。大丈夫だ」

「悪鬼と戦うことになるんだよ?」

「知っている」

「色々と条件とか待遇とか聞かなくていいの?」

「もう決めたことだ」

「もっとよく考えた方が……」

「何だよ? 仲間になって欲しいのか欲しくないのかどっちなんだ?」

「それは、なって欲しいけど……危険なことだし、よく考えた方がいいんじゃないかと思って……」


「はっはっは! 無駄だぜミノリ! この年頃の少年で、こんな話を断る奴はいねーよ」

真一の後方から、豪快な声が響く。振り向くとそこには、一人の男性が立っていた。

 男のとしは二十台半ば。黒のオールバックの髪に、垂れ目がちな瞳、朱色のネクタイが目立つ黒いスーツを崩しながら着ていた。

鉄也てつやさん! そんなこと言っても、ちゃんと説明はしないと!」

「まぁまぁ、こいつはもう入る気満々だし、細かい説明は俺が後でやっとくから! さ、真一、行こうぜ!」

そう言うと、鉄也と呼ばれた男は真一の肩をたたいた。真一はビクリとし、こわばった表情で鉄也を見る。

「はぁ⁉︎ 行くってどこへ……ですか?」

「どこへって? そりゃお前、俺の研究所だよ」

「えぇぇ⁉︎」

「さ、こっちだ。行くぞぉ!」

「あっちょ、まだジュース飲み切ってないんですけど!」

「あぁ? まぁ、研究所でも飲めるから安心しろ。俺がいだので悪いけどな。はっはっは!」

鉄也はそのまま真一を連れて行ってしまった。

 残されたミノリは呆気に取られながらも、同じようなことが他にもあったのか、ため息と共に次の瞬間にはストローに口を付けていた。そうしてメロンソーダを一口飲み、ゆっくりとストローを唇から離す。

「ふぅ……おいしい」



「ちょっと! 研究所って何の研究所ですか?そもそもあなたは誰なんですか?」

鉄也に手を引かれて、真一は暗い道を行く。

「あ? そうか、まだミノリに紹介されていなかったのか」

「……あなたが無理やり僕を連れていかなければ、そのうち紹介されていたかもしれません」

「おぉ、そりゃ悪かったな」

そう言いながらも、鉄也は歩くペースを緩めることはなかった。二人はそのままどんどんと進んでいき、やがて広い部屋へと入っていった。部屋はとても暗く、幾つも机が並べられていた。机の上には、何やら色々なものが置いてあるようだが、暗くて何があるのかまでは確認できなかった。

「さ、まずは自己紹介と行こうか」

鉄也はそう言って、部屋に明かりをつけた。

 暗かった部屋は一気に白く照らされ、真一は思わず目を伏せる。やがて目が光に慣れ、前を見ると、真一は驚いた。

「これは……⁉︎」

机の上に並べられていたのはショーケースに入った無数の武器。剣、やり、銃、それに見たこともない武器までも展示されている。それが大きな体育館程の広さの部屋一面に敷き詰められていた。いや、それだけではない。見ると、壁にまでも多くの武器が展示されており、まるで武器の博物館のようだった。

「ようこそ真一、俺の研究所へ。俺は日野原ひのはら鉄也てつや。ここにある武器、心機しんきを開発、研究する部署、『夕空ゆうぞら』の隊長だ」

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