第14話 ここがSOLAの中心基地だよ

「ソ……SOLAソラだって!?」

真一は驚愕し、思わず声を荒らげてしまった。なぜなら真一は、その組織の名前を知っていたからだ。

「SOLAと言えば、日本の産業シェアの約半分を占めている大企業じゃないか! それがどうして……まさか、たった十年で日本の技術が急成長したのは悪鬼を研究した……」

真一は、今ある知識とそこから推測されることを早口で話す。しかし、その口はミノリの手によってすぐに塞がれてしまった。

「しーっ! そこまで! ……その辺も後で詳しく話すから、今は移動しよ?」

口に人差し指を当て、小声で話すミノリ。

「あっ、ゴメン……」

「ううん、大丈夫。じゃあ、基地に案内するね。私に付いて来て」

そう言ってミノリはスタスタと歩いていく。彼女の歩くリズムと共にワンピースのスカートが左右に揺れる。夏の日差しに映える彼女の白いワンピースが、真一には痛いほどまぶしく見えた。


 ミノリの後ろを歩くこと数分。

「着いたよ」

そう言われてたどり着いた場所は、真一の想像とは違っていた。

「……本当にここでいいのか?」

「うん、ここで間違いない」

「えぇ……」

ここは真一の家の近所にある神社の入り口、やしろへ続く長い石畳の上。有名でも何でもないここは祭りの時期でもない今、近寄る人も少ない。ミノリはキョロキョロと辺りを見渡し、真一の他に人がいないことを確認すると、鳥居とりいの正面に立ち、手をかざす。

「開け、螺生門らしょうもん

すると、鳥居の中の空間が水面のように揺れ始める。ミノリがその中へ入ると、彼女の体は揺らぎの中へと消えていった。

「んなぁっ⁉︎」

「あはは、最初はびっくりするよね。でも大丈夫、怖くないから入ってきて」

ミノリは揺らぎの中から上半身だけを出して、真一に手を差し伸べる。

(ここに入れば、きっと未知の世界に行ける……!)

真一はそう思った。

 期待と恐怖が入り混じる心を深呼吸で落ち着かせ、真一はゆっくりと歩き出す。そしてミノリの手を取り、揺らぎの中へと入っていく。


 揺らぎの中へ入るとき、何か薄い膜を破るような違和感があり、思わず顔を覆う。そして、その違和感を抜けると、目の前が急に明るくなった。


コツ……コツ……


 踏み締める地面の感覚が、先ほどまでの石畳とは違うことに気づく。顔を覆う手をどけ、足元を見ると、そこには近代的な白いタイルの床が広がっていた。

「……すごい!」

真一は思わず声を漏らす。

 顔を上げると、そこには螺旋状らせんじょうに渦を巻き天にも届く程に高い銀の塔がそびえ立っていた。それを中心に、周りには多くの高層ビルが立ち並ぶ。真一たちが立っている白い広場には様々な形状の門があり、そこからは真一たちのように移動してきた人たちが次々と出てくる。

「ようこそ真一。ここがSOLAの中心基地だよ」

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