第8話 自分も一緒に戦いたい……
僕は、夢でも見ているのか?
思考が現実に追いつかない。しかし、真一は心の奥が突き動かされるような気がしていた。
目の前の出来事に、理屈ではない感情が込み上げてくる。
「すごい……」
一筋の汗が頬を伝う。真一は、
「すごいね! もう倒しちゃったの?」
校舎の方から女性の声がした。見ると、ミノリと名乗った少女が鋼太たち二人の元へ走り寄って来た。今までの彼女の言動や行動から、彼女がリーダーであると真一は予想していたが、彼女はまだ戦っていない。やったことといえば、自分をこの場に縛りつけたくらいだ。彼女も鋼太たちと同じく、特殊な能力を持っていることは間違いないが、あの二人よりも強い力を持っているとはどうしても思えない。
真一は、彼らの会話に耳を澄ました。
「ヤッホー! ミノリン! 見てた見てた? 私たちのコンビネーション」
「うん、抜群の連携だったね!」
「ミノリさんの手を
「本当にぃ? 鋼太ったら、最初に悪鬼の攻撃受けたとき少しキツそうじゃなかった? 素直に実はギリギリでしたって言ったらどう?」
「いや、楽勝だった。そっちこそ、いつもより飛距離が短かったぞ。疲れていたのか?」
「いーや、鋼太の位置に合わせただけだもん!」
「俺はお前の投げた悪鬼の着地点に合わせて立っていたんだ」
ミノリは黙って鋼太たちの会話をしばらく聞いていた。しかし、しばらくたって少し声のトーンを落として、語りかける。
「話に水を刺して悪いけど、二人とも、自分の仕事は忘れてない?」
二人は一瞬ビクリとした後、わずかな沈黙が流れる。
「えーっと……何だっけ?」
少し焦ったような笑顔で、彩華は鋼太を見つめる。
「悪鬼から使えそうな素材を
「そうそう! さぁ! もう一息頑張ろう!」
「油断しないで。そのもう一息が、一番危険だから」
三人は悪鬼が
だがまだ動いている。
「……こいつ、まだ生きてるぞ!」
「しつこいなぁ!」
二人の声を聞くと、ミノリは瞬時に笛を構えた。
「鋼太さん、彩華さん! 一発で仕留めよう、今度は私も力を貸すよ!」
二人はうなずくと共に武器を構える。
「鋼太さん、とどめは一番攻撃力が高いあなたに任せる。全力で
「あぁ!」
「彩華さんは鋼太さんのサポートをお願い。悪鬼の動きを
「了解!」
「行くよ……!」
ミノリが笛に口を当てると同時に、鋼太の剣は再び輝きを放った。鋼太がその剣を振りかぶり、叩きつけようとしたその瞬間。
ドガァァァァァァァァァァァァァ!
土煙と共に、悪鬼が穴から飛び出してきた。
三人は急な出来事に驚いていたが、その目はしっかりと悪鬼を見据えていた。
「鋼太ぁ! 一気に仕留めちゃって! 外さないでよね」
「あぁ!」
鋼太の剣を握る手に力がこもる。こちらに襲いかかって来たなら、瞬時に反撃できる体勢だった。
しかし、悪鬼は鋼太たち三人には目もくれず、全く別の方向へと向かっていった。
「何⁉︎」
「どうして私たちを無視するのさ⁉︎」
悪鬼は折れた足は使わず、長い胴体を使ってまるで蛇のように
「……まずい、あっちには⁉︎」
ミノリたちが目を向けた先は校門があり、そこには真一がいるのだ。
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