第7話 放て、堅牢剣!
悪鬼が完全に二人に背を向けたその時、鋼太は彩華に指示を出す。
「彩華、いつも通りにいくぞ」
「OK。ド派手にやっちゃおう!」
二人は目で合図を送り合った後、鋼太は勢いよく飛び出して悪鬼の背中に飛び掛かる。
鋼太はとても体格のいい男性だ。
「うおおおおおおおおおおおおお!」
いくら悪鬼の目が悪いと言っても、流石にこの行動には気づかれてしまう。悪鬼は振り向き様に巨大な鎌で斬りかかった。
ガキィ!
金属同士が激しくぶつかり合う音が校舎に響く。その衝撃は空気を激しく振動させ、ビリビリと肌を刺すような痛みを与える。しかし、その衝撃を一番近くで受けていたはずの鋼太は、痛くも
「彩華! 今だ!」
「わかってるぅ!」
鋼太の合図を聞いて、彩華が悪鬼に向かって
彩華はとても露出の多い服を着た細身の女性だ。
歳は二十代前半。美しく描かれた眉に、長いまつ毛から
彩華の鞭はみるみる伸びていき、動けない悪鬼の周囲を取り囲むように旋回した後、悪鬼をきつく縛り上げた。
『グギャァァァァ!』
苦悶の叫びを上げる悪鬼を尻目に、彩華は更に鞭をきつく縛る。
ギチギチ、バキバキ。縛る音と、悪鬼の
「一気に行くよぉぉ!」
彩華は鞭を担ぐように構え、走り出すと共に鞭を思い切り引っ張った。それにより、悪鬼は高速で地面を引きずられ、校庭の真ん中まで運ばれる。一体その細い手足のどこにそんな力があるのか、彩華は担いでいた鞭を正面に持ち直し、体をぐるぐると回転させ、鞭ごと悪鬼を振り回した。
「おりゃおりゃおりゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
ブンブンと
彩華はそのまま校舎の方にいる鋼太に目を向けると、彼はどっしりと構え、剣を握って立っていた。それを確認すると、彩華はニヤリと笑い、鋼太に向かって叫んだ。
「ハイ鋼太ぁぁぁぁ! ……パスッッッッ!」
掛け声と共に、彩華はハンマー投げの要領で思い切り悪鬼を投げ飛ばした。
縛りつけられた質量の塊が、緩やかな放物線を描いて鋼太の元へ落ちてくる。鋼太はその軌道を正確に見極め、思い切り飛び上がる。鋼太の跳躍が最高到達点に達した時、丁度その目の前に来る悪鬼。飛来する悪鬼に対して、鋼太はさっと
すると、一切の反動を示すことなく悪鬼はその場で静止した。そして次の瞬間、鋼太の剣が
「放て、
叫び声と共に、鋼太は剣を悪鬼に叩きつける。
静止していた悪鬼は目にも止まらぬ速さで地面に叩きつけられ、その衝撃波は地面に巨大なクレーターを作る。
鋼太はそのまま着地し、クレーターの中の悪鬼を見下ろした。
「ふぅ……一丁上がり、だな」
「やったねぇ! 鋼太ぁ!」
満足げに剣を肩に担ぐ鋼太に、彩華が遠くから手を振りながら声援を送る。
校庭に出てからの彼らの様子を見ていた真一は、あんぐりと口を開けて
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