第6話 僕はまた、独りなのか

鋼太こうたさんと彩華あやかさんは物陰に隠れながら体育館のほうへ。私はこの子の安全を確保し次第すぐに向かうから」

ミノリはよく通るはっきりとした声で二人に号令をかける。

「あぁ、分かった」

鋼太と呼ばれた屈強な男性は、その異様な剣を肩に担ぎながら、静かに応える。

「すぐに倒しちゃうからね! 行こう、鋼太!」

彩華と呼ばれた細身の女性は、むちをバチンと鳴らしながら鋼太の方を見つめて笑いかける。

「うん、お願いね!」

ミノリがそう言うと、二人は体育館の方へと走っていった。


 ミノリはそれを見送り、しばらくすると、真一の方を振り向いた。

「真一は絶対にここから動かないで。あの悪鬼は真一を狙ってるかもしれない。真一が外に逃げたら、悪鬼は真一を追ってくる。そうすると、町にまで被害が広がってしまうかもしれないの」

そう言うと、ミノリは笛を構えた。そして、まるで演奏しているかのように指を動かす。しかし、真一には。彼女と真一の間の距離は約二メートル。本当に演奏しているなら、音が聞こえないのはおかしい距離である。ミノリはしばらくすると笛を下ろし、真剣な表情で真一を見つめる。

「ごめんね真一。本当はこんなことしたくないけど、もう真一はここから動けない。戦いが終わるまで、ここで待ってて」

ミノリはそう言い残すと、鋼太たちを追って体育館の方へと向かっていった。


 真一は走り去っていくミノリの後ろ姿をポカンとしながら見つめていた。真一はミノリから何もされていない。手足も拘束されていなければ、閉じ込められているわけでもない。これでどうして動けないのだろうか。そう思って、真一は一歩踏み出そうとした。


「⁉︎」


 踏み出そうとしたその足は、まるで鎖でつながれているかのように動きが制限されてしまっている。

 手も足も、自由が効かない。しかしそれでいて、動こうとしなければ縛られているような窮屈さはない。

「何だ、これは……⁉︎」

ミノリは今、鋼太や彩華と一緒に悪鬼と戦っているのだ。それを助けにいけない、見にいくことさえできない。激しい焦りにも似た歯痒はがゆさに、真一は顔をゆがませる。

「クソッ、僕はまた、ひとりなのか……」

真一はうつむき、その場にしゃがみ込んだ。

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