第3話 隣同士に見える星も、実際は離れている
午前〇時、ベッドで眠ろうとしていた
妙な胸騒ぎがしたのだ。
取り止めもない思考で頭がいっぱいになり、何度眠ろうとしても目が冴えてしまう。それでも無理矢理目を閉じたが、どうしても眠れなかった。
着替えを済ませ、玄関の扉を開けると、夏の夜が持つ独特の暖かい空気が体を包む。どこか湿気を感じるこの感覚は嫌いではない。今は家の前の道路の交通量も少なくとても静かで、見慣れた町の姿も不思議な新鮮さを感じる。
今は、どこに行くのも自由だ
そう思い、真一は特に目的地も決めずに歩き始めた。しかし、どれだけ歩いても彼の気分が晴れることはなかった。むしろ夜の闇に引き込まれるようにどんどん暗い方向へと心が流されていく。孤独な自分、仲間ができない自分、ゲームの中と現実との違い。さまざまな思考が頭を
やがて歩くのをやめ、静かに空を見上げた。
今日の空は雲一つなく、星がよく見える。それを見て、昔読んだ星の本のこと思い出した。夜空の上では隣同士で輝いているように見えるあの星たちも、実際はとても離れているのだ。それはまるで、自分と周りの人たちのようだと思った。近くにいても、心は繋がっていないのだから。
あぁ、誰でもいい。自分を救ってはくれないか。自分の隣にいてくれないか。仲間になってくれないか。真一は目を閉じて、そう強く念じた。
その時。
〜♪〜
音が聞こえた。とても優しく、暖かささえ感じる音だ。それは不思議な音で、頭の中に直接響くかのようだった。
真一は驚き、周りを見渡す。すると、一人の少女が屋根の上に立って、フルートのような楽器を構えているのが見えた。肩にかからない程度の長さの髪を風になびかせ、青を基調としたセーラー服を着た少女。彼女はそのまましばらく楽器を奏でたのち、楽器を下ろした。そして、気がついたころには姿を消していた。
真一は少女がいなくなったあとの屋根の上をしばらくながめていた。あの不思議な音は、もう聞こえない。
間違いない、音を奏でていたのは彼女だ。
彼女は何者なのか、何をしていたのか。得体の知れない者に対する少しの恐怖はあったが、それに勝る圧倒的な好奇心が真一の心を満たしていく。
(彼女はどこに行ったのだろうか? あの屋根から降りたとなると……)
あれこれと考えていると、遠くから地響きと共に爆発のような大きな音が聞こえてきた。真一は直感で、あの少女と関係があると思った。音がした方向は彼の通う学校、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます