「改造とドジ」
何故基地に向かったかは、生き残るためにかなり使えそうなものの心当たりが基地にあったからだ。
12番車両倉庫のシャッターを開けると、そこに二台の輸送車両が残されていた。
「これ?」
「そう。TAV-019。小さくて使いやすいと思うんだ。」
TAV-019は空挺部隊が使う小型装甲輸送車両で、ある程度の防御力がある上に小回りも効いて、長距離移動も可能なため旅にはうってつけだった。
「これを改造して使うよ。」
「すごいねリオ君って。改造なんてできるんだ」
「・・・3日以上はかかるけど、いい?」
「いいよ。4日でも5日でも待つよ」
そう言って、サナは倉庫から出ていった。おそらく基地内の食料を集めるんだろう。
僕は様々な工具を倉庫から集め、改造に取り掛かった。
最初に車体側面両方についているミサイル発射装置を取り外して、収納箱にした。
そしてそこに予備工具をできるだけ入れて、もう片方にはもう一台のパーツを入れようと思った。
もう一台のTAV-019を出来るだけ分解して、エンジン部分や履帯などを一旦出して、履帯は車体側面に張り付け、エンジンは比較的損耗が激しいパーツを取り外して
予備部品にして収納箱に入れた。
「わあ・・・早いね・・・食料集めてきたよ。基地に大量に戦闘食缶と固形食料が残ってた。」
「ありがとう。必要分運んでおいてくれないかな」
「分かった。残りはどうするの?」
「ここを出るときに積むよ」
サナはまた倉庫から出ていった。
僕は作業に目を戻す。
もう一台のTAV-019から側面の装甲板を切り出して、今日の作業を一旦やめた。
「お疲れさま。もう夜だね」
サナはサエダさんと違って、かなり元気だった。
「はい。魚缶」
「あ、うん。ありがとう」
「美味しいね」
「うん。なんか豪華だね」
「いつもより少ないのに?」
僕とサナの会話はたどたどしかった。でもサナは楽しそうだった。
笑う顔が可愛いな。そう思った。
「そうだ。毛布持ってきたんだよ。一緒に寝よ」
その夜はサナと一緒に寝た。一人で寝るよりくっついて寝たほうが、あったかいからというサナの提案からだった。
十分な寝具がないのでその判断は筋が通っていたが、告白の事を考えると、くっつくための口実に思えてしょうがなかった。
朝はいつもの時間に起きた。2年間も軍で過ごした体にはきっちり起床時間が刻まれている。
毛布から出るとすごく寒かった。思わず身震いをしてしまった
「あ・・・おはよ。」
サナが寝ぼけ眼で起きてきた。サナは朝に弱いらしい。
ふらふらとおぼつかない足取りでサナは倉庫のドアに向かう
「あー!少女!気を付け・・・」
悪魔が忠告したころにはもう遅かった。
「キャア!」
うち開きのそう子のドアを開けた瞬間、外に積もった雪が小さな雪崩を起こしてサナを巻き込む。
「・・・目が覚めた。」
「お、おはよう・・・」
サナには悪いけど、なんだかドジっぽさが可笑しかった
サナは目が覚めたとは言ったが、いつもと比べてだいぶローテンションで朝食を用意してくれた。
僕が昨日の改造の続きをしようと準備を始めるとサナが手伝うと言ってくれた。
今日は銃撃戦などに備えて防御力を強化するため昨日切り出した装甲板二枚をサスペンションの棒にくっつけ、溶接して車体側面に固定した。
この装甲板があれば、外付けの荷物が被害に遭うことを抑えられるうえに、盾にできる。
「車載用のかな?水筒みたいな形した水タンク持ってきた」
サナが車載用の薄型水タンクを持ってきていたので、サイズを測って側面に置き場を作った。
「ふー・・・今日はこの辺かな・・・」
「明日には出れそうかな」
「明日は荷物を載せよう。それが出来たら出発できるよ。」
今日は少し浅い眠りだった。
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