「過去と恋」
「冬だな。知ってるか?少年。旧人類のころはな、雪が降らない時代があったんだぜ」
悪魔が雪の降る空を見上げて面白そうにつぶやく
「本当に?」
「ああ本当さ。悪魔は嘘をつかない。」
「なんで降らない時代があったの?」
「お前が生まれる前、・・・サヘラントロプスの卵だったかな?あの人間のクダラン技術保管場所の名前・・・まああれの発見前の動力の主力は何だったか知ってるか?」
「えーっと・・・一次燃料?二酸化炭素を出す燃料」
「正解。初めての正解だな!おめでとう!」
「あ、うん」
「まあそういうのはさておき、旧人類の技術が未発達だったころは二酸化炭素バンバン出して機械をガシガシ動かしてたわけ。そのおかげで大気の層がぶっ壊れ、
太陽の熱が強く入ってくるようになって雪も降らなくなったってわけ」
「旧人類の歴史の本にはそういうのはなかったな・・・」
「だろ?それが面白い所って訳さ!人間は失敗してしばらく経つと失敗から学んだことより欲に従うようになって、結局失敗を忘れるんだ!はははは」
悪魔の皮肉たっぷりな笑い声は僕に学べと言っているような気がした。
「おっと。来客だ。じゃ。」
「あ、・・・また話してたの?」
「うん。旧人類について話してた」
「難しいこと話すね~・・・」
「・・・で、急に呼び出してきたけど何かあったの?」
サナが急に下をうつむいて黙り込む。
そのまま歩き始めたので僕は訳が分からないまま動く事が出来なかった。
心像の音が聞こえそうなほど近づいたとき、僕は抱きつかれていた。
「ごめん!わけわかんないよね・・・」
サナはそのまま黙り込んでしまった。
それが恋の告白だという事を理解すると、黙り込んでしまった理由も分かった気がした。
「・・・待ってくれない?」
「え?」
「僕、死ぬかもしれないしさ・・・」
「・・・」
サナは何も言わずに、唸るような感じで口をもごもごさせてしまった。
暫く黙った後、必死に声を絞り出すようにして「聞いてくれてありがとう」と言って、逃げるように走っていった。
呆然と立ち尽くしていると悪魔が背を向けて姿を見せた。
「あぁああああ!もう!聞くのも嫌だわ!見てないからまだましだけど!お前から出来るだけ離れたかったわ!クソッタレ!」
悪魔は発狂するようにぶつぶつと何かを言っている。
夜になり、宿舎のベットで前に人の温もりを感じたのはいつだっただろうかと考えながら眠りについた。
不思議な夢を見た。長い夢だった。
僕はそこにない空気のように立っていた。
そこには灰色の高い建物や、商品をこれでもかと置いたような靴屋、周りの風景に一切合わない何かガラス張りの店
そしてたくさんの人。
そこにいる人々は笑顔もあれば、表情を変えずに歩く人もいて、みな服装がばらばらだった。
全周囲から聞こえてくる声は雑音と化し、少し意識すればやっと話が分かるほど幾億の音が混ざり合って僕の耳に届く。
「ママー、もう疲れたよぉ。だっこしてー」
「もぉ。・・・じゃあ、あそこにあるカフェまで頑張って歩こう!パフェ買ってあげるよ」
もしかしたら旧人類なのかもしれない、そう思った。
「これが現実だと思うか」
突然、後ろから懐かしい声が聞こえてきた。
低くて、落ち着いているけど力強い声。
「お父さん・・・?」
振り向くと、やはりお父さんがいた。
「久しぶり。」
お父さんは僕の頭に手を置き、髪をわしゃわしゃした。
「寂しかったか?」
胸がどんどん苦しくなっていく。
「・・・大丈夫だ、よ」
「そりゃよかった。それが聞きたかった。」
涙を必死にこらえて、お父さんの目を睨んでみせた。するとお父さんは笑って
「ははは。反抗期だな?ここまで強くしてくれたサエダさんには感謝しかないな。」
「・・・お父さん」
「なんだ」
「変わらないね。人の笑顔って」
「そうだな。」
お父さんとそのあとその謎の世界を歩き回ったが、会話は覚えていない。
でも、最後にお父さんが
「じゃあ、生きろよ。」
と言ったのは鮮明に覚えている。そのとき、お父さんは泣いていたんだと思う。
起きると、僕は泣いていた。
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